219話 そして近付く大一番⑤
こちらも準備、ロロを召喚する。
そして矢の刃を、ソウクロウから受け取る。
思い返せば、呪いと化した苦しみは、俺自身も体験していた。
呪いを受けてからロロが分離するまでの満月の夜数度。確かに呪いとひとつだった。
呪いと化すと苦しくて、助けを渇望して。
けどまともに周りを見る余裕もないのと、生物だった頃の根幹的な本能と入り混じり、手あたり次第に怪異を喰らう怪物と化す。
ロロが暴走した時も、同じような想いだったらしい。
「それを、どうするつもりだ?」
と、ソウクロウからの問い。
「ロロは元々、この中にいた、この刃の呪いの一部だった。逆を言えば、ここに残る呪いは、ロロの一部。
だから、ここに残る呪いを取り込んで、救済したい。それが、ロロが賭けの報酬で臨んだ事だ。」
「再度警告するが、それで暴走なぞしたら、封殺に手心は加えんぞ。」
「言ったろ、覚悟の上だ。」
屈み、ロロに槍の刃を差し出す。数秒見つめたのち、ロロがその刃を噛み砕く。
ロロの牙の隙間から、黒い呪いの霧が漏れ出す。
ロロを通じて、刃に内包されていた呪いを感じる。どす黒く煮込まれるような苦しみの中、まともな思考さえ叶わず、いつ訪れるか見えない出口を待っていた呪いたち。
俺がロロにしたのと同じように、ロロがその呪いたちに寄り添い、苦しみを受け入れる。
そしてロロが呪いを飲み下した時、ロロの見た目に変化が現れた。内包されてた呪いの持ってた姿の影響だろうか。
浮かぶ黒い模様と共に、2本のツノと翼、4本の足先は爬虫類的な鱗と共に爪は太く鋭く。
だけど呪いとしての暴走はせず、呪いの全てがロロとなった。
…そういえば、これまでのロロの召喚体って、エンパイアハントのスキル「サモン:ウルフ」からパクったものだったんだよな。
それがベースにあるといえど、ロロの意思で呪いを取り込み寄り添った新しい「ロロの姿」、か。