213話 ロロの行く末③
ここは…?
…あぁそうか、戻ってきたのか、現実に。
なにやら結界に囲われてはいるけど、大ガラスと戦っていた場所だ。
「気が付いたか。」
というソウクロウの声。結界を維持したまま、言葉が続く。
「妙な妖力の揺らぎがあったが、平気か?」
「大丈夫、だと思う。」
もうさっきのロロのような、嫌な感じはない。
…いや、なんだか妙だ。そもそも魔力を感じ取る事ができない。
「取り押さえる為に、いくらか封印を施した。
時間と共に弱まる封印だが、その間経過は観察させてもらう。」
「…分かった。」
客観的に見れば、あんなの見たら警戒するのが当然だろう。俺がソウクロウの立場でも、すぐに野放しにできるものとは判断しないと思う。
試してみたが、ロロの召喚も、ハルバードの生成も、やはり全くできなかった。
「…済まない。ここまで発展させてしまったのは、僕の責任だ。」
結界を解きながらソウクロウがぽつりと言う。
「いや、最近ロロの様子が変だとは思ってたんだ。なのに無視した俺の方が──」
「もっと根幹的な所、貴様を戦力として数えるべきではなかった、という話だ。」
「…どういう事だ?」
少しの間を置き、ソウクロウが返す。
「元々貴様は妖術魔術にゆかりの無い者だったのだろう?
厄介な事に巻き込んでしまった、と魔界の者より聞き及んでいる。」
話の元はハルルだろうか? 確かに見方によっては、そう思われても不思議ではないかもしれない。
「確かに最初は偶然の遭遇だったけど、深入りすると決めたのは俺の意思だよ。
大事が起ころうとしてるのを知ってて、けどただ待ってるだけで、もしもの結果になってしまったら納得いかないと思うから。」
「知らぬが仏というものもある。無関係の者に影響が及ぶ前に、霊的な事象に対処し解決する。それが昔より鍛錬を重ねた、陰陽師としての役目だ。
故に、本来なら貴様は護られる側、戦いから遠ざけなければならなかったのだ。」
一息の間を開け、ソウクロウが続ける。
「とはいえ、それは全てを防げる訳でもない。この僕自身も知らぬ所で不備は起こってる事だろう。多少は仕方ない事としよう。
だが呪いを、怪異に近いそれを、術による見た目と忙しさから甘く見てしまっていた。
…こうして冷静に思い返せば、未然に防げた事なのだ、此度の事は。」
そう言うソウクロウの様子からは、深い後悔が見て取れた。
「どの道、封印で当面は戦力にはなれぬだろう。
暫くは休むがいい。」