212話 ロロの行く末②
答えはもう決まってる。
俺がロロを信じる限り、完全な黒にはさせない。
そう思い、黒い塊に歩み寄る。
黒い塊が形を変え、大きな狼の姿を取る。
普段であれば、勝ち目を探すより即撤退を考えるようなタイプの見た目。
けど、ここが俺の夢の中みたいなものなら、なんだってできるはずだ。
なら、ロロ関係を除くと次に来る「魔法のイメージ」。
両手のひらをその間に作り出す火球。漠然としたイメージでもしっかり形になってくれる。
サッカーボールサイズのそれを、黒ロロに投げつける。
炸裂、広がる火炎。それを目隠しにしつつ、創り出したハルバードで斬りかかる。
しかし既に黒ロロはそこにはいなかった。空を切ったハルバードの先端が、アスファルトに突き刺さる。
炎の壁を突き抜け退く黒ロロの姿。エンパイアハントでの移動用ワイヤーを建物に引っかけ、それを空中から追う。
そのまま2本目のハルバード、直に落下突き。刃はよけられるが、割れたアスファルトからの氷で黒ロロを捕まえる!
すぐに氷は割られ逃げられるが、新しいイメージは今ので掴めた。
距離を置いた黒ロロからの、黒い針状の遠隔攻撃。
それを横に避けながら、3本目のハルバード。今度は最初から意図してアスファルトに突き立てる。
そのひび割れを増幅、トゲ状に隆起する土で黒ロロに仕掛ける。広範囲を封鎖された黒ロロが、後方へと撤退する。
狙い通り、さっきと同様にワイヤーで先回り。突き立てた4本目のハルバードの先から、くくり蔦をイメージした蔦の拘束。氷より強い締め付けは、黒ロロでも簡単には解けないようだ。
…いや、蔦だけでなく、様子が妙だ。動きにぎこちなさが見える。
俺が信じるロロの影響ではないだろうか。次の行動までの短い時間ではあったが、そう思うには十分だった。
だからこそ、最終段階へと迷いなく行ける。
地面に突き立てる5本目のハルバード。
その場から見渡し、左右対称に均等に突き立つハルバード。そう、この配置だ。
円周上を5等分する、この配置。
ソウクロウが時折使う陣、であり昔読んでた漫画内の技。
5本の間を魔力の線で繋ぎ、浮かび上がる星形の陣。その中心の五角形に収まる黒ロロ。
手元のハルバードを握り、力を込める。
「…五行星浄陣!」
繋いだ線が、壁のように立ち上る。そして中央の空間が、強い光で満ちる。
黒ロロの輪郭が曖昧になり、これまで倒した怪異のように、霧のようになり溶けていく。
けど、ロロはそれだけじゃないはず。
解けていくその姿に触れ、ロロを想う。
初召喚早々襲われた事、直後にハルルに制圧されて懐いた事。その後俺の言う事は聞いてくれなかったり、戦果とハルルが絡むなら協力してくれたり。
…そういや結局まだ俺自身に対しては協力的ではなかったな、とも。
確かに呪いにより発生した存在、それは事実なのだろう。けど、それがロロだ。そして関わっちゃった以上、いなくなってほしくはない。
やがて黒が溶けきり陣の光も収まり、その中央に残った白い霞。
迷いで自分を失っていた、ロロだ。
それが俺の想念に触れ、改めて狼の輪郭得た。