210話 発展と③
翼を射貫かれた大ガラス。
拮抗していた所に痛手を受けた以上、そこからソウクロウに確保されるまでは一瞬だった。
並行に並ぶ紙人形数体の攻撃を受け、墜落した大ガラスが光沢の壁に囲われる。
「どうだ? 使い勝手は。」
一応警戒しつつ歩み寄ったところで、ソウクロウが問う。
「ちょっと当てるのに工夫はいるけど、魔法とか使える人なら問題無いと思う。
威力については見ての通りだ。」
大ガラスの翼に空いた穴からは、黒い霧のような魔力が漂っている。
見た所、弾はかなり余裕を持って貫通していた。あれなら多少硬い相手でも通用するだろうし、安全圏からというのも評価点。
…尤も、割く人員あたりのコスパには疑問があったが、戦力として取れる択が増える事に意味があるのだろう。
さて止めを、という時だった。
駆け抜ける影が、大ガラスに飛び掛かる。ロロだ。
突然の事で反応できなかったところに、ソウクロウが声を荒げる。
「まずい、そいつを引き戻せ!」
その言葉で咄嗟にロロに向かうが、目にした出来事に手を止めてしまう。
ロロが大ガラスの傷ついた翼を引きちぎり、貪っている。
まるで獲物の血で汚れるように、断面からの黒い霧がロロにしみ込んでいく。
「ロロ…?」
「話は後だ、とにかく止めるぞ!」
そう言いソウクロウが、紙人形を構える。
けど行動に至る前に、ロロがこちらに飛び掛かる。反射的にハルバードを作り出し、その爪を防ぐ。
状況を掴みきれない、けど今のロロが何をしでかすか分からないくらいは分かる。
後ずさったロロを追い、一気に踏み込む。ロロが反撃に転ずるが、寧ろ好都合。
こちらも反撃としてロロの前足を掴み、強制帰還させる。
いつもより黒い霧状に分解されたロロが、右手を通じて戻ってくる。