209話 発展と②
最早最初の100均の安物でのお試しのノリからは想像しなかった、しっかりした作りの…エアガンっていうやつだろうか。
重々しいスナイパーライフルのスタンドを展開し、設営する。
探知の為にロロを控えさせてはいるが、やはり近付く反応は無し。ソウクロウが置いて行ってくれた、怪異除けの提灯が働いてくれている。
今回の方向性は、ひたすら威力重視との事。
これまでの試作が常に威力に悩まされた結果、思い切ってこうなった、らしい。
取り扱いの小回りは完全に捨てたし、装填にも時間がかかる。けどその分、十分な威力が出るはず、と。
ソウクロウが歩いて行って、木々に阻まれここから視認ができない場所へ。
弾となる魔力を込めながら、しばらくの静寂。
けど、戦いの始まりは明確にやってきた。
突如吹く突風、斬撃のように薙ぎ払われる木々。
けど前線でソウクロウが防いでるのだろう、それは俺のいる場所を避けるように周囲を吹き抜けていった。
そうして見通しの良くなった向こう側、ここからでもよく見える今回のターゲット。大ガラスの黒さは、空の背景にとても目立つ。
遠くで鮮明には見えないが、まとわりつくように飛んでいる小さい白はソウクロウの紙人形だろう。
それを介した結界の術で応戦し、大ガラスは満足に動けないでいる。
その紙人形の中に浮かぶ、目立つ赤い×印。事前の打ち合わせで決めていた、狙撃の狙い場所マーカーだ。
スナイパーライフルへの魔力の吸入が止まり、装填完了。スコープを覗き狙いを定め、トリガーを引く。
一直線に伸びる白い光の弾は、どうにか印の近くへと向かう。しかし交差する中心から外れた所を通り過ぎ、空へと過ぎ去っていく。
そもそもこんな距離があるのに、素人の狙撃が当たる訳がないか。
…前にも似た事を思った時があったな。修学旅行の時に、キリに実像ライフルを借りた時か。
その時キリが言ってたっけ。「実際の射撃の腕より当たって当然という意思が大事」的な事を。
結果、その時はオートエイムみたいな感覚があった。けど最近の魔法銃の試運転では、そういった感覚は来ていない。
なら、その上で魔術的に「弾を当てる」イメージ…そうか、別に直接的なエイムに限らないか。
遠くではソウクロウが大ガラスを逃さず、けどやはり捕えきれず。
溜めの時間がじれったいが、その間に「弾を当てる手段」のイメージを強める。
危うくも見える前線も、攻撃機能を削がれてここまで届く風も、なるべく思考から外していく。周囲の他の事も、ロロに任せればいい。
ただ魔力を込める銃と、狙う×印に意識を集中させる。
そして、トリガーを引く。
再び走る白い光弾。
さっき以上に目標との直線から外れているが、別に構わない。今回の狙いは、この後だ。
距離の半分を過ぎたあたりで、光弾がカーブを描き始める。
結果的に鋭い角度で安定したその軌道は、×印の中心を通り抜け、大ガラスの翼の根元を貫いた。