204話 その先にある③
「そうですね、改めて最初から順を追いましょう。」
となれば時系列の深い、神話の方からでしょうか。」
口調を徐々に落ち着かせながら、ハルルが話す。
「ゴデュラ信仰の神話は、その名にもなっている一人の魔術師『ゴデュラ』から始まりました。
その時代、まだ魔法は一般的ではなく、魔術師というのは希少な存在で、立場は弱いものでした。
そこで、ゴデュラは5人の仲間となる者を集めました。
その仲間となる者も魔法は扱えませんでしたが、ゴデュラが彼らに魔法の使い方を伝授しました。自らを闇を司る者とし、5人にそれ以外の属性、炎・水・風・土・光をそれぞれ割り当てて。
そしてその5人が更にそれぞれの勢力を持ち、下に付く者にそれぞれが魔術を伝授し、戦力としました。
そして、魔法に対し否定的な者たちとの戦いとなりました。
最初、ゴデュラの軍勢は戦力で負けていました。
しかし魔法という存在が世界に知られるにつれ、ゴデュラの軍勢たちのように魔法を求める者も増え、ゴデュラたちは彼らを迎え入れました。
それは戦力差を逆転させるには、十分過ぎました。
戦いの末、ゴデュラ達の率いる軍勢は勝利を収めました。
その後、軍勢によって魔法は更に広められ、その子孫であるのが私達魔界の徒人と森人です。
…大まかな流れとしては、こんなところでしょうか。」
『土人形の主』側の視点で考えれば、目的の結果に相違は無い、けど。
「微妙に現状との食い違いがあるのは、神話…物語として再編成されたのか?」
「あるいは私達の介入などで変化が起こったか、こことは別の地での戦いの事なのか。
改めて情報をすり合わせしたいですし、先入観の少ないユートさんからの現状の話も聞かせてください。」
「まず『土人形の主』とやらに聞いた話、奴らの狙いは魔力濃度を上げる事。
それによって魔法を表沙汰で使いたい的な事も言ってたな。」
「多少ニュアンスの差異あれど、ゴデュラの一団と主張は同じようですね。」
「それで、これはソウクロウに聞いた話。
抵抗してはいるけど、着実にあっちの目論見通り魔力は増していってる。
それで最終的には幽世との境目が無くなるって。」
「そのカクリヨとは?」
そうかそこからか、と思いつつ返答。
「ちょっとした異世界みたいなもので、基本はこっちの世界に似てるけど、魔力の状態によって空間が歪んでたり…ちょっと違った世界だ。」
それを聞いて思う所ありげなハルル。
「聞く限り、私達の世界にも似たものがあります。
遺跡やダンジョンとよばれるもの。建物であれば外観と内部の空間の大きさが異なっていたり、内部構造が変化したり、、時には突如現れたり。」
肯定を返すには漠然とした一致、だけど、
「否定できないな、それが幽世と関係してるって事。」
全くの別物としか思えていなかった2つの世界、その間に現れたする情報。
ifルートとはいえ世界観が変わるレベルの事がこれから起こるのか、と思うとぞっとした。