199話 進化と進歩②
移動のさなか、探知の端にふと見つかる強い反応。
事前情報では強いのはいないとの事だったが、そんなのはすぐに揺らぐ環境。順当なだけでは済まない事も想定の内。
一度気を締め直し、その反応へと向かっていく。
その先に居る標的を見て、背筋にぞわ走る寒気。
確かに居ても不自然ではない、というかこれまで「そういう系」と出会わなかったのが幸運だったのだろう。
黒く細長い節々とした胴、びっしり並んだ足。
木の上、枝を渡る大ムカデだ。
別に虫に特段苦手意識がある訳ではない。が、これは流石にビビるなという方が無理がある。
強い反応だったとは言っても、あくまでこの場において目立つという程度。戦って苦戦する程ではないだろう。敵対の意思を見せる様子も無く、危険性は低そう。
けどそれは俺基準での話。こんな目立つのを、野放しにする訳にもいかない。
それに、今回は新たな備えもある。
ソウクロウから聞いた追加機能。銃身を軸に、渦状にねじるように魔力を装填する。
そして引き金を引く。さっきまでと違い、一直線状の魔力が放たれる。威力重視の弾、その試作だ。
僅かに螺旋状の余波を残しながら、鋭く大ムカデに向かっていく。
命中、しかし渦状の余波を残し弾が散る。
当たったのは腹側とはいえ、硬い外骨格。こういうのは節を狙うのが定番だろうが、這いまわる中での隙間を狙うのは、素人技じゃできる気がしない。
巨体、枝の上という移動手段、移動は結構速い。
追いながら追撃を図るが、移動しながらだと装填が結構集中力を要し、時間がかかる。どうにか装填し、もう1発撃ちこむが、やはり弾かれる。
…そもそもこのレベルの怪異との戦闘自体が想定外なんだ、検証記録を優先してる場合でもない。
気持ちを切り替え討伐優先。銃をしまい、いつものハルバード。やはりこっちの方が手に馴染む。
しかしそうなると問題は場所だ。あの高さに刃を届かせるのも手間がかかるが、それ以上に密集する枝がそれを阻む。
魔力で模倣した毛皮は高い魔防だけでなく、多少なら物理的な防御力にもなってくれる。
流石にノーダメージとまではいかないが、枝の薄い所なら通り抜けられるだろう。
そして場所を見定め、一気に上へと駆け上がる。
思ったより強引な突破になってしまったけど、ともあれ上は取れた。
しかし多少層を抜けてもやはり枝まみれの中。さっさと抜け出すに限る。
ハルバードの振り下ろしを大ムカデに叩きつける。長い体がずりずりと枝から引き下ろされる。
両端は枝の上に残り勢いが殺されたか、ダメージは通ってない。けどハルバードから手を放し足で押さえ、切っ先と柄と地面とで拘束。
そしてもう1本ハルバードを作り出しとどめを、って時だった。
枝の上にとどまってた頭部が落とされる。そして追うように降りてくるロロ。
状況把握に頭が追い付かない間に、そのまま大ムカデの頭を噛み砕き、断面となった首から黒い妖力を吹き出し暴れながら消失していく。