187話 修学旅行中の波乱⑦
「ほんっま申し訳ないです!
まさか小野里の妹様とお付きとはつゆ知らず…!」
ひと段落し落ち着いて、元凶との対面。
子供くらいのサイズの、袴の妖狐がひれ伏している。
「その呼び方はやめろ。あと付き人じゃねぇ。
誰かの指金か?」
キリのその質問に、そいつが答える。
「いえ個人的な行動で! 誰に言われたとかではなく!」
言葉選びは怪しさとは裏腹に、様子を見るに嘘を言ってるようには見えない。
「…ならいい。時間をかけすぎた、帰るぞ。」
答えを聞くや否や、キリが足早に帰路へとつく。
「あんな緩い対応でよかったのか?」
戻る道中、釈然としなかった流れを問いにする。
「今は何か要求するより、早く戻りたいしな。」
それともユートは何か要求するのか? 今からでもあっちは応じるだろうけど。」
そう言い指さした後方、さっきの狐が開通作業の為についてきている。
「そもそも状況分かってないんだよ、こっちは。」
「あー…そっか。」
思考の間ののち、キリが言葉を続ける。
「まぁざっくり言や、牽制状態ってやつだ、『東妖衆』とここの『西天会』は。」
「対立関係なのか?」
「昔はバチバチだったらしい。けど時世が変わって表立って暴れにくくなってから、表向きは協力関係を結んだんだと。
けど妖怪の発祥なんて大体は畏れだとかだ。こーゆー意識高い奴も、たまにいんだよ。」
「うぅ、冷静に纏められると恥ずかしい……。」
そう言い少し歩調が落ちる狐に、キリが話しかける。
「で、見たところ高位の存在ではなさげだが、どこのモンだ?」
「今井組に従事しとります、呼び名はらくがんいいます。」
「らくがん」って確か砂糖菓子の名前だよな。言い方からして偽名だろう、真の名を明かさないのは自衛の一環か? 呪術的に名前を使うイメージはあるし。
「でまぁ各個戦力と人数で広く戦力がある西に対し、少数精鋭なのが東。その東の戦力ってのが早い話、うちの姉貴のとこだ。」
「でもこいつも戦術次第じゃかなり強いんじゃ?」
「ここではそうでも、現世だとどうだかな。うちも外じゃ無力もいいとこだし。
それに仮にこの戦力を出せたとして、あの見習いのアイナにタイマンで勝てるビジョンも見えないしな。」
「…けど、アイナの戦力って確か──」
確かに確かに狐火の範囲攻撃とスタミナは凄かったが…いや、確か話では聞いたな、使える別の術の事。
天候操作とか言ってたっけ。どれくらいの事ができるかは分からないけど、仮に任意範囲に雷や雹を降らせられるとしたら……。