184話 修学旅行中の波乱④
「…大概の事はできる。
他に聞く事はあるか?」
そのキリの言葉に対し一考、一抹の不安を言葉にする。
「…ゲームくらいの感覚でいいんだよな? 大丈夫だよな?」
「普通の人間とかならともかく、妖術使えるくらいなら見た目致命傷でもまぁ死なんと思う。
それに、無益な殺しになったら立場で損するのはあっちの方だ。ほら、弾に威力が無いだろ?」
そう言いキリが指した先、最初の銃弾が飛んだ先。上方からの射撃、地面に着弾したはず。
だけどそういった痕跡は、どこにも見当たらない。
「とはいえサバゲーは紳士協定だ。掠りでもしたらゲーム的な死、それくらいの気持ちで挑め。」
「…分かった。」
「それで『試したい事』は準備いらないのか?」
「そうだな、やってみる。」
要領は普段の召喚と同じ。でも、今回はそれを俺自身が纏うように行う。
丁度満月の翌日、記憶も新鮮だ。より鮮明にイメージする為に、左腕から。布がインクで染まっていくように……。
キリも存在自体は聞いてたのか、そこまで驚いた様子ではなかった。
「…姿の行き来自由なのか?」
「いや、見た目を被せた着ぐるみみたいな状態だ。それでも真似れば、何かできる事増える気がして」
見た目だけ模した人狼の姿、それでも耳も尻尾も実際にあるような感覚で動かせる。ここが幽世なのも影響してるのだろうか?
「そうか、分かった。行くぞ。」
そんな軽いノリでいいのか?と思ったが、駆け出したキリにツッコむ暇は無かった。
その恩恵はすぐに現れた。
さっきキリが打ち抜いたもの、それは木の葉を固めて操った人形だった。動くだけで、葉同士でこすれる音がする。わずかな音だが、今ならそれを聞き分ける事ができる。
なら、弾道を待つまでもなく場所は分かる。
高台の狙撃ポイントの陰を進むキリ。道中、動く兵隊人形の音。
移動し始めてすぐの時、一度キリが対処したので時間は測った。動き始めてから発砲まで4秒程、その位置なら間に合う。
一気に踏み込み速度を上げ跳び、壁蹴りの要領で木を中継地点として素早く屋根の上へ。
見た目にも葉の塊の人形がこちらに気付くが、もう遅い。
銃口がこちらを向く前に、ハルバードが木の葉人形を両断する。