179話 修学旅行③
「つまりレイヤーみたいに幾つもの幽世があるんだよ。赤いフィルム通すと赤と白が同じの別世界に見えるみたいに。
で、そのカラーサークルみたいな幽世の中心にあるのが現世だから、現世からはあらゆる幽世と干渉する、っていうのがオレの見立てだ。」
ショウヤのトークはこちらまで余波が及んだ。人数余りで2人部屋なのをいいことに、さっきからずっとこの調子だ。
「…随分と踏み込んで調べてるんだな。」
ショウヤは外野枠ってイメージあった分、余計にここまで怪異関係に関わってるのが意外でならない。
「まぁな、元々こういう世界観考察は好きだし。それで皆の助けになれるなら、お得ってもんだ。
それに実際にそこに自分の知らない世界があって、現地行って調べられるような機会なんて貴重だろ?」
「現地って、ゴーファでいう『スポット』をか?」
位置情報ゲーム「ゴーストファインダー」、その陣営同士で奪い合う領地に当たる場所。
要は何かでるかもしれない危険区域だ。
「まぁな。戦う力はなくても、霊的なものは見えるようにはなったから、現地に行って得られる情報も多いし。」
「…危なくはないのか?」
「普段はそうでもないぞ。何も知らないゲームプレイヤーが普通に来れるくらいだし。
それに状況が状況なんだろ? 危険だとしても、覚悟の上だ。」
「殊勝だな。」
「んな高尚なもんじゃねぇよ。お前やキリやハルル達が頑張ってる隣でのんびりするのが、居心地わるかったからだよ。
お前らみたいな戦う力は無いけど、だからこそ時間だけはある、それだけだ。」
じっとしてられない気持ちは分かる。けど同時に、これからを考えると心配でもある。
ショウヤの話したい事が一通り落ち着いた丁度その時だった。
不意に襲い掛かってくる、左腕から広がる痛み。
そうか、解決したと安心して把握を疎かにしてしまっていたが、今日がその日か。