177話 修学旅行①
2学期が始まりしばらくたった月半ば、高速道路を走るバスの中。
非現実的な界隈に居たところから現実に引き戻される、3泊4日の修学旅行だ。
西と言えばたこ焼きの方を先にイメージするタイプ。けどやはり定番というか、行き先は寺や神社の方だ。
サービスエリアでの休憩を挟み、席に戻る途中、隣の席であるショウヤのスマホ画面がちらっと見える。何らかの検索結果と思われるテキストの画面だ。
「何か調べものか?」
スマホ画面をこっちに向けてくれる。タップされたリンク先のロード時間の後に出たのは、観光案内サイトだった。
「あぁ。現地に着く前に、改めてチェックしておこうと思ってな。」
「黄泉津寺…って確か明日行く所か。わざわざ予習なんて律儀な。」
「オレも寺とかは興味無かったよ、去年までは。
けどキリ達の手伝いしてたら、妖怪と神社の間に自然崇拝的な繋がりとか見えてきて、マッピングが面白くなってきてな。
その延長線上にあるのが、こういう神話なんだよ。だから、ぶっちゃけ結構楽しみだよ。」
「…まって手伝ってるってどういう事?」
先に思考に引っかかったのは、その初見情報だった。
「あれ、聞いてない? あの寺から情報集めるの手伝ってんだよ。
ハルル達ってこっちの文字読めない人がほとんどだから、そこの隙間をな。」
「…なるほど。」
ハルルは日常会話のテキストチャットくらいは読み書きできるようになったが、その後の増員も結構いるらしい。全体で言えば、読める方が圧倒的に少数派なのだろう。
「てか、むしろお前は興味ねーのか? オレよりも身近そうだけど、そういうの。」
「いや、意識した事無かったっていうか、意識する余裕が無かったっていうか。
ここ最近、俺自身の事で色々あって、手一杯だったからな……。」
そういや、ソウクロウ達の拠点も寺院を名乗ってるなら、表向きには何かを祀ってるのだろうか? 聞いた事も調べた事も、そういう気配を感じた事もないけども。
寺社の実例で近いのだと、学校近くの神社の神使の狐たちを思い出すが、アイナも神使の遠縁とか言われてたな。それに連鎖して思い出す、「東妖衆」なんて、明らかに対立組織がありそうな名前。
…まぁ、なるようになれだ。