167話 同盟結成?③
「無理と思ってたら実行してねーんだよ。
ほら、とっとと取り掛かんぞ。」
アイナの放った炎が、眼前に広く走る。
「待て待て、こんな林で炎なんて使ったら!」
「そんなアホなヘマすると思うか?」
見ると、炎が通った後は燃えておらず、焦げ跡すら無く。
しかし見た目には派手だし、何らかの威力を持ってそうな魔力が込められていた。
驚いた小動物…いや、今なら分かる。情報的にも、霊感的にも。そういう姿をした妖怪がこちら側へと逃げてくる。
「文字通りあぶり出しってなぁ!」
そしてそれらの背後の炎と挟むように、こちら側からも炎の壁。どうやら霊的な物だけ焼く炎らしい。
炎の中にわずかに見えるそれの消失は、まさに消し炭にされるようだった。
そして炎が消え、静寂が訪れる。
「…この調子でずっといくのか?」
初手からこの調子、探索範囲の広さに不安が付き纏う。
「そーだよ! 全部こうしていきゃ、いずれ終わんだろ。」
「とはいえ流石にあの範囲、無茶じゃないか?」
「人数に差があるとはいえ、これくらいの事を異界の連中はやってんだ。
あたしらの立場を思い知らせるには、これくらい片付けなきゃ、だろ?」
「だろ?って言われても」
「舐められたら終いなんだよ、こういうのは。」
別に現状のままでも特に問題には発展しないだろうとは思うが、今はアイナの調子に合わせる事にしよう。
「…分かった。今回はその案に乗ろう。けど、一つ言わせろ。
その話、俺が組み込まれてないだろ?」
ここまでの雰囲気、完全にアイナの単騎行動の流れだ。
「…そういやそうだな。
で? お前には何ができんだ?」
使役する狼、ロロを呼び出す。
ロロと意思を通わす時間は十分あった。町の防衛がハルルの防衛にもなるって事、それに伴うという形にはなったが、とりあえずの協力関係。
そしてロロありきでの調子を確かめたりして、分かった事もある。
「俺が場所を指示する、探知は任せろ。」
ロロによる魔力探知能力は、魔界組やキリにソウクロウ、その誰よりも高かった。