165話 同盟結成?①
それからしばらく日が経った、ある日の事。
買い出しから帰ってきた時に「らしくない」姿が見えた。
同じアパートの逆端、白狐の獣人アイナの部屋。そのベランダに、その部屋主は居た。
俺は俺自身の事で手一杯であまり関わる事はなかったが、それでも時々見かける事はあった。
元気が一番良かったのは最初、オカルト研究同好会の活動部屋で出会った時。その後は日が経つにつれ、じわじわとテンションが下がっていってるようだった。
そして今、手すりにもたれかかって黄昏ていた。
こういう場合、そっとしておいてあげた方がいいだろう。そう思い、歩を進める。
「おい。おめー今見ないふりしてスルーしようとしただろ。」
やべ、ばれた。
「いや、まぁ、触れない方がいいのかなぁって。」
「そうだ、おめーは『こっちのモン』だよな?」
「『こっち』って、魔界側の人じゃないって意味で?」
「そーだよ。この辺、異界の奴らが幅利かせてっけど、お前確か違っただろ?
ちょっとツラかせや。」
「で、どういう用件だよ。」
荷物だけ自室の所に置いてきて、アイナの部屋のベランダ前へと。
「そう、同盟組もうぜ同盟! こっちのモン同士でさ! えーとお前……。」
「ユートだ。とりあえず落ち着いて話聞かせろ、最初から。」
…そういえば最初に会った時、流れに負けて名乗ってすらいなかった気がする。
「なんか最近異界の奴ら増えただろ?」
「そう、らしいな。」
「もうここら一帯、そいつらの管轄みたいなもんじゃん。」
「そう、かなぁ…?」
「なんかヤだろ。あたしらの世界の事なのに、よその世界の奴らに任せるなんて。
こっちの世界の問題くらい、こっち側で解決したいだろ。」
「…一応、あっちの世界にとっても関係ある事らしいよ。こっちの魔力増大に共鳴して、あっちも異変が起きてるとかなんとか。
それに、ある程度は事の成り行きは聞いて知ってるけど、立場上はそっちの方が上じゃないの?」
情報源として東妖衆に頼る所も大きいようだし、それ以外でも魔界組がこっちでの生活で東妖衆を頼ってる所は大きいだろう。
加えてほぼ形だけだろうとはいえ、わざわざお目付け役としてアイナを付けているのも、手綱という面もあるのだろう。
「だとしても実感がねーんだよ! 戦力がほぼあいつらだし、その細かい指揮もそっちに詳しいあいつら側だし!
マリ姐から大まかな指示は来て伝えちゃいるけど、人数多いしそれぞれの戦力も把握しきれないし、『細かい判断は任せる』しかできてねーの!」
柵から身を乗り出しながら、アイナが言葉を続ける。
「だから、立場復権させんだよ。けどあの陰陽師の奴はもう意地もなんもねぇし、お前がなんか戦力になれ。」
「いや俺は別に現状のままでも何も──」
「お前ちょっと手伝え。10分後な。」
返事を待たず、アイナは部屋に引っ込んでしまった。
…とりあえず乗ったように振舞って、てきとーなとこで誤魔化す方が良さそうだ。