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163話 今の戦場②

 ナナノハと共に向かう、町から外れた林の奥。

 今日の日替わりボスレイドに近場が選ばれていた。その情報を見るのも、最早2ヶ月振りだ。

「なんか懐かしいな、この感じ。」

 日替わりボスレイドという名前を聞くのも、こうして道無き場所へと向かうのも、呪いを受けてからは無縁だった事だ。

「そう言っていられるのも今の内だと思います。

 あと、一応既に怪異記録の密集地なので、油断はしないよう。」

 言われるまでもなく、聴覚のように意識せずとも周囲の魔力状態は感じ取っている。強制的に。

 反応と言えるほどの存在は見当たらないが、湿度が高い時に似た重々しさ。辺り一帯の魔力が高いのを感じる。


「俺も前より戦えるようになってると思うけど、本当に手伝いはいらないのか?」

「はい、今日は見学回と思ってください。

 理由は2つあります。」

 ナナノハが指で「1」を示し、言葉を続ける。

「ひとつは、ボクの中での決め事。ボクの戦闘能力を、実際に見て知っておいてほしい。

 大規模破壊から擬態・暗殺も容易な能力なので、その面での疑念を持ってほしくない、全てとはいかずとも知った上で信頼してほしい。ボクなりの誠意と信頼の証というやつです。」

 続けて指で「2」を示し。

「もうひとつは、実戦的な話。この2ヶ月で情勢も大きく動いたので。

 一度現状を見て、その上で戦線復帰するかを判断するのを勧めます。」



 そして現地到着。

 ナナノハに言われなくても分かる。不自然に何かが通った後のようななぎ倒された木、感覚に意識を向けるとその先にある巨大な反応。

 川の流れる穏やかな音が、その異様さを際立出せている。

「ここで待っていてください。こちら側に居ると守れる自信も、巻き込まない自信もないので。」

 そう言い、川からいくつか飛び出している石を渡り、向こう側へと跳んでいく。



 以前にも見たように、ナナノハが片手を川に浸す。周囲の水がナナノハの支配下に入り、形を取って氷結し、4機の氷のバリスタを作り出す。

 林の中へと向かっていった痕跡の延長線上、反応のある場所へと氷の矢を曲射で撃ち込む。

 命中したのだろう、その先にある反応が立ち上がり、姿を現す。


 現れたのは木の丈を余裕で超える大熊。高さ15m?20m?距離が離れてるのもあって、目算があまり働かない。

 そこにもう1陣の氷の矢。けど、まるで効いてるようには見えない。

 それでも注意がナナノハに向き、道中の木を踏み倒しながらじわじわとにじり寄る。

 それを見て、ナナノハが数歩下がる。撤退の構えではない、屈み再び川に片手を浸す。直後、ナナノハの姿から色が抜け透明に。単なる水となって川に流れ込む。

 すると、その地点より下流が逆流し、水が集まっていく。

 それがいくつもの柱のように立ち上り、氷の頭蓋を被った多頭の巨大な蛇のような姿になる。


 大熊の体躯任せの剛腕の薙ぎが、5本になった水蛇の首の内3本を弾き水しぶきへと帰す。

 しかし残る2本が大熊の両腕を捕らえ、落ちた頭蓋もそれを目印に新たな首が映えてくる。それどころか追加で1本、合わせて4本の首が追撃にかかる。


 予想を超える規模の増大だった。魔界に滞在した時の事を思い出すほどの。特撮映画でもみてるかのような。

 正直、仮に自分があの場に参戦したとして、果たして戦力になれるのだろうか?


 戦況は常にナナノハが有利な展開だった。

 ナナノハの拘束力は、首1本や2本で大熊を押さえ付けられる程ではない。捕らえたそばから剛力で振り払われる。

 けど、ナナノハを負かす弱点になるものが、傍から見てても分からない。勝利条件の分からないまま、大熊からの攻めに出れていない。

 そして時間が長引くほど、川の水を取り込み続けてるナナノハに有利になっていく。

 8本まで増えた首が、大熊を囲う。2本の首の拘束を逃れ下がった先は、また別の首だった。

 拘束から逃れた先での拘束、万全でない体勢でのそれは、形勢を動かすのに十分だった。


 絡み合う首が溶け合い大きな水の塊となり、氷結し。

 残り1本の首、その鼻先に作られた大きな氷の棘を、避ける事は叶わなかった。

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