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159話 戦力として②

 当日。場所はソウクロウの方から指定があった。

 これまで何度か来たソウクロウたち陰陽師の活動拠点、明穏寺院。表向きは普通の寺社としてるとの事で、林の中にぽつりとある立地の神秘さからその手の界隈では有名らしく、辺鄙(へんぴ)な場所にも関わらず休日にはそれなりに人が来るのを見かけている。

 その裏、木々に阻まれ寺社がギリ見えなくなる場所。隠されるように、この広場はあった。



 最後に時間を確認した時点で、これまでの変化始まりの時間まで1時間切っていた。

 広場の隅にはソウクロウとハルル。…こっちから頼んでの事とはいえ、こうも注視されてるとやり辛いな。


 いつものようにウルフを顕現、そこに勝手にロロの意思が出力される。電源の入れられたロボットのように勝手に動き出し、バックステップで一歩引く。

 遠巻きながらも居るのを把握できない訳が無い場所にいるハルルに無反応なのは、俺の方が意識の優先度が高いのか、それとも満月が近いのが影響してるのか?

 なんだっていい、こうして俺に敵対心を向けてくれるだけでも十分。


「あまり時間は無い、始めろ。」

 ソウクロウの合図。言われるまでもなく先手を取り飛び掛かるロロを、咄嗟に作り出した長柄の斧で弾く。

 制圧、自分の方が上と認めさせる方法、考えはある。ハルルの時のように、物理的に上を取って押さえ付ける。

 その為に、この拮抗状態を破り接近する必要がある。スタミナで粘り勝つか、隙を見つけて叩き落とすか?

 2回、3回と同じように。前と違って地面以外の足場が無い分動きは単純、反撃を入れるのは簡単。

 4回、5回。思考にも余裕がでてきた。どう仕掛けようか。

 6回目、といこうとしたその時だった。瞬間的に感じ取った、何らかの気配。それはロロも同じようで、攻撃を中断する。


「…乱入者か。」

 とつぶやくソウクロウ。目配せを受けたハルルがそちらへと向かう。

 手際に呆気にとられるところに、今度はソウクロウがこちらに向けて。

「貴様は目的を遂行しろ。上利田はその為に──」

 …なんて言ってる間に、ロロはそっぽを向きハルルを追っていく。

「くっ、仕方ない…追うぞ。」



 ハルルを追ったロロを追い、木々の茂る場所へ。

 視界が悪い中、剣を振れる程度の隙間を陣取るハルル。その周囲に群がる気配の正体、なんだろう、黒いモヤモヤに包まれた蛇の群れ?

「あれは一体…?」

「小妖怪の一種だな。時折迷い込むのだ、恐れを成さぬ下位なる者が。

 だが数が多い。手は尽くすが時間がかかる。」


 黒蛇の何匹かハルルに飛び掛かる。振るわれる剣が、軌跡に残る風が、襲い掛かるそれを霧散させる。

 しかし全ては討てていない。被弾にこそ至っていないのは流石ではあるが、場所の狭さもあってかなりギリギリ。

 とか思った矢先だった。死角からの突撃がハルルの腕に噛み付く。

 瞬間、そこに電撃。ハルルの術だろう。だけど自傷はしないなんて都合のいい話は無く、軽い火傷の跡。

 間を開けず黒蛇の追撃、数匹の塊が飛び掛かる。


 だけどそこに乱入者。身を隠していたであろうロロが黒蛇に不意打ち、その牙が一団を捉える。

 それを見て反撃を中断したハルルがこちらに気付く。

「ユートさん! どうして!?」

「悪い、ロロがそっち行っちゃってそれで。

 大丈夫か?」

「…正直、多数の相手は苦手です。

 でも、そういうのって挑んでこそでしょう?」

 自分との手合わせでは見せなかった、挑戦者の眼差しだ。

 けどみるからに苦戦。わずかな傷でも、蛇型という事は毒やそれを模した呪いがあるかもしれない。

 その状態で数の暴力の長期戦は、好ましいものではないだろう。


 優先度なんて考えるまでもない。加勢の為に駆け出す。

 だが不意打ちの痛みでよろけ、近くの木に手をつく。黒蛇の攻撃ではない、呪いのものだ。

 想定より大分早い。呪いを受けた部位由来だろう、左手の先から全身に広がってく痛み。

 立っているのがやっとな程のまま、自分のものではない何かが垣間見える。

 これは、ロロの思考…?


 …そうか、分かった。

 怒ってるんだな、お気に入りを傷つけられて。

 その想いを、ロロを、わざわざ否定する必要もない、か。

 俺だって「大事な人」の中にハルルがいるのは確かだ。

 だから、一緒に戦おう、ロロ。

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