156話 リフレッシュ①
またやってきた河川敷、今度はハルルと共に。
ハルルが振るう鞘を付けたままの剣を、辛うじて斧の柄で捉える。それでもよけきれず先端が脇腹に当たるが、これでも前より大分見えてきてる。
「何でこんな事を急に?」
追撃を仕掛けながらハルルが言う。それを回避した隙間で言葉を返す。
「たまには体動かさないとなって思ってさ。」
「本当は行き詰まってる、とかでなくて?」
振りかぶってた一撃に、つい余計に力がこもる。
それを受け、ハルルが言葉を続ける。
「当たりのようですね。例の魔術の事です?」
…どうやらこの状況、ごまかしはきかないらしい。
「確かに気分転換したかったのはある。
けど、戦いの感覚を思い出したかったのも確かだよ。」
ハルルの反撃を後ろに退避、仕切り直し。
「休止してた割には動けるじゃないですか。」
その合間を見て、ハルルが言う。
「手加減されて対等じゃ足りないんだよ。怪異相手でももうちょっと本気出すだろ?」
剣術自体は前よりも本気で来てる。けど最初に見た、風を飛ばす遠隔攻撃は使ってきていない。
「そうですね、常に全力ではありませんが、制限を設ける必要もありませんし。」
「正直な意見が聞きたい。今の俺でハルルが相手してる怪異、戦って勝てると思うか?」
「…征伐はできるでしょうけど、手傷は必至でしょうね。今の連戦を鑑みると、戦力としては厳しいと言わざるを得ません。」
だろうとは思っていた。けどいざ実際言われてみると、どうしても落胆はある。
「まぁ、そうだよだよなぁ。」
「それと術の扱いに関係があるのです?」
「ロロ…あの魔術に宿った意思を従えるのに、実力で俺の方が上だって分からせる必要があると思う。
今は活動休止状態だけど、いずれ活発になる時が来るはず。その時に真正面から戦って圧勝できるくらいになる、それが今の目標かな。」
自分で言いながら思う、曖昧すぎる行動指標。けど解決の手がかりが得られない以上、何もしないよりはマシ。
少しの思考の間ののち、ハルルが言葉を返す。
「…もしかしてあの時の、余計な事でした?」
「いや、とりあえず大人しくさせないといけなかったしあれは助かったよ」
もしあの時にハルルが来なくて、ロロに逃げられていたら。考えるまでもなく、事はもっと厄介になってただろう。
「それで、今日のところはもう引き上げですか?」
構えを緩めながら、ハルルが聞く。
「いや、もう少しお付き合い頼む。」
気合を入れなおし、斧を構え攻めに踏み込む。