表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/231

152話 試行錯誤⑥

 不意に、ウルフの接続が切られる感覚。だけどウルフが消失した訳ではなく、まだそこにいる。

 独立して動き襲い掛かってくるウルフを、咄嗟に長柄の斧を作り出し、柄で防御。

 こんなファーストコンタクトにはなったが、確かに「自分でない何か」がウルフに宿っていた。


 柄に噛み付くウルフを押し返す。弾いた体躯は空中で身をひねり、爪の音を僅かに響かせフローリング上に軽やかに着地する。

 思惑は通った。次のプランを考える為、一旦ウルフを戻す。


 …戻せない。拒否された? 例えるなら回線切れのような感覚。

 ウルフは消滅せず、少しの距離を空け、こちらに警戒の様子を見せている。

 術に慣れて、召喚の維持時間も伸びてきている。とはいえこちらの操作を受け付けない状態、それでいて維持の為の魔力が俺から取られているんだとしたら、それはまずい状況。

 それに、ここで暴れられると部屋が大変な事になってしまう。


 …けど、鎮圧するにもどうやって?

 自分のこの斧の戦闘スタイルは、ウルフを従える事を前提としたもの。小回りを要する事をウルフに任せ、それで足りない威力を補う為の斧。

 つまりウルフがこちらにいない今、斧だけでの戦闘なんて、不完全もいいとこだ。加えてリーチと威力と防御の為の長い柄も、部屋という狭さの中では裏目でしかない。


 なんて考えてる間に、ウルフの跳躍。

 策を練る猶予なんて無い、斧の刃を逆にして振るう。

 手荒な手段にはなってしまうが、とにかく暴れさせたくはない。刃の背面がウルフを捉える。

 けど手応えが無い。斧を足場とし、ウルフが更に上へと跳躍する。

 とはいえそこまで高さに余裕は無い天井、進行を邪魔する位置に置くように、斧を振る。

 再びウルフが斧を足場に反転跳躍、少し離れた所に着地する。位置取りが丁度いい、ウルフの背後にキッチンそして玄関側。

 とりあえず目的のひとつ、部屋荒らしは阻止できそうだ。


 だけどそれはそれで余計に狭い場所、こっちの武器には不利。

 せめてもとエンパイアハントで使ってるものと同じように、長さ普通の斧に。この短さに、懐かしさを感じる。

 こちらから詰め寄ると、警戒して寧ろあちらが引いてくれる。

 けどそれだけで追い詰めるには至らない。途中で意を決したように、不意に踏み込んでくる。

 どうにか反応し、同じように斧の背で迎え撃つ。やはり手応えは無くウルフは壁蹴りのように跳ね、玄関のドアを足場に再び仕掛けてこようとする。


 けどそこで想定外の事。ドアを蹴ろうとしたウルフの足が、僅かなずり落ちの時にドアノブに引っかかる。

 壁蹴りは勢いを失い不発。不安定な体勢の空中から、着地と同時に飛びのく。

 その退路にあったはずの障壁は、先ほどの蹴りで開け放たれていた。


 …まってそれはそれでヤバい。逃げられたら捕縛が無理なんてもんじゃない。

 誰か頼ろうにもそんな余裕──


 …いや、既にそこにいた。物音から様子を身に来たのだろう、玄関脇までハルルが来ていた。

 ハルルの方が邪魔と判断したのだろう、ウルフがハルルの方に襲い掛かる。声をかける猶予なんて無いままに。


「えっと……これはどういう状況なのでしょうか?」

 だがそんな心配なんていらなかったらしい。

 事は一瞬、ウルフを地面に押さえ付ける形で制圧完了していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ