150話 試行錯誤④
やがて窓の外が暗くなり始めていき。自分の場所からは見えないが、おそらく満月が昇ってることだろう。
合図とでもいうように、重い風邪のようなしんどさ、全身の痛み。
だけど心構えができていたのと、根津クリニックで貰った札のお陰だろう。先月と違い、正気の部分は残ってはいる。
身体が変化しているような違和感は感じるが、詳細を確認するような心の余裕なんてない。
痛みが引くが、今度は異常な程の空腹感。
何もしてないのに息が上がる。呼吸に唸り声が自然と混じる。
異常な状態を体感しつつも、客観視もしてる。自分の中にある何かを、更にその内側から観察してるような感覚。それに包まれ、閉じ込められているような感覚。
この「何か」が呪いの意思とやらか?
しかし思考はこんなにも正常なのに、体は全く自由が利かず、拘束に対して抗う。
それでも縄はほどけたり千切れたりはせず。むしろ魔術的なものが込められてるのだろう、触れてる部分が焼けるように痛い。
そんな状態で寝る事もできず、時計すら無い部屋でどれくらい経ったかもわからず。
いっそ素直に狂ってしまえた方がどれだけ楽だっただろう。
気が付いた時には、既に空は明るくなっていて。
手足を縛る縄は役割を果たした上で、まだ放さずにいてくれた。
そして、部屋の端でソウクロウが待機してくれていた。
「お早う。調子はどうだ?」
「…サイアクな夜だったよ。」