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136話 日替わりボスレイド④

 地に伏した蔦の巨人を、ソウクロウの紙人形がワイヤー状の魔力で押さえ付ける。

 蔦の巨人はもがきはするが、自重と拘束、この状態から逃れる事はできず。

 それを岩山のように登っていくソウクロウを、振り落とす事すら叶わなかった。


 背の中央にソウクロウが手を置き、そこを中心として別途5体の紙人形が配備される。それらが互いに線を結び、円と五芒星を(えが)く。

 陣から光の柱が立ち上り、グラデーションが蔦の巨人の全身を捉える。

 その状態がしばらく続いたのち、蔦の隙間から黒い煙状の魔力が漏れ出す。やがて空洞になった内側に崩れるように、同様に全体が消失していく。



「…ほんとにこんなのを何度も?」

 近くに座り休み、ウルフを撫でながら聞く。

「あぁ。だが呪いの核に触れて一つ確信した。

 標的となる怪異が、より強大になってきている。回を重ねる毎に、徐々にな。」

「でも、まだ苦戦する程でもないし、猶予はあるんだよな?」

「この一帯の妖力自体が増しているからな。無自覚だろうが、こちらもその恩恵を受けてはいる。

 だが、このまま双方の力量が上がり続ければ、そのうち肉体的な限界は来る。対して敵は、強度も思うがままだ。」

 インフレの末にレベルキャップの違いで差が付くような話か。


「やっぱり、協力を頼んだりはしないのか?」

「協力? 誰とだ?」

「ほら、ハルル達とか、この間のアイナとか。」

「異界の者の方なら、あちらの出方次第でその線はある。奴らの目的の真意次第では、こちらの情報と交換とするのも(やぶさ)かではない。

 だが、あの狐の事は信用ならん。」

 使用した紙人形を手元に集めながら、ソウクロウが言葉を続ける。

「狸の方は個人として信用に足ると判断した。だが、狐の方やその一団は信用ならん。

 奴の行動の浅さ、全容の見えぬ背後の組織。そういうものに裏切られた話は、実録として少なからず残ってる。」

「実録?」

「過去の怪異の観測、対処したという書物群だ。」

 なるほど、実際に対応に当たったとなると諸説あるとか言われる伝承より、そういう確実な情報が……。

「…それって結構貴重なものなんじゃ?」

「あぁ。そしてそれが協力に至れぬ理由でもある。」

「どういう事だ?」

 少しの間ののち、ソウクロウが答える。

「怪異が強大となる要員、その内のひとつは怪異同士で食い合う事だ。

 考えうる最悪は、こちらの持つ記録を開示した結果、その対象を奴らの糧とされ、その上で敵対される事。

 故に余程の事情でも無ければ、こちらの情報は渡せんのだ。」

 意外だった。協力できない理由が帰ってきた事が。

 ソウクロウの事だからどうせ掟がどうとか、あるいは単に意地になってるとか、そんなとこだろうとか思っていた。

「けど、戦力として合算するくらいなら……。」

「例えば、だ。

 お前に『この場所のを討伐してこい。ただし呼ばれ名を含むあらゆる情報は、持ってはいるが貴様には与えぬ。』と言ったら、気が乗るか?」

「…確かにちょっと悪意っぽく聞こえるかも。」

「であろうな。

 そうして関係がこじれるよりは、今のように線引きを決め、不干渉とする方が穏便なのだ。」

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