135話 日替わりボスレイド③
意識からいつもの長柄の斧を作り出し、ウルフを召喚。
ソウクロウも紙人形の束を投げ、術のコントロール下に置き浮遊させる。
その魔力に釣られてか、蔦の巨人もこちらの存在を意識した様子だ。
動きを止めろ、とは言われたが、拘束する手段を持ち合わせてはおらず。
となれば1ダウンを、とはなるのだが、見るからに正面から当たれる相手ではない。
前傾姿勢な巨体、狙うなら背後からだろう。その途中で腕の一本でも奪えれば。
蔦の巨人が拳を振り下ろす。鈍重、見てから安全圏まで下がるのは問題ない。
けど回り込むとなると障害は多い。足場の悪さ、巨体故の移動距離の長さ。
素直に特攻したら、振り向くだけでその腕にやられるだろう。巻き込まれる倒木も範囲として無視できない。
ならば、とウルフを先に走らせる。
視界でなく魔力で周囲を見てるのだろうか、それとも動く物に反応してか。蔦の巨人の注意がそちらに向く。
その隙に、と一気に踏み込む。振りの合間、静止状態の腕に思いっきり斧を振り下ろす。
手ごたえ、だが表面に少し傷を付けただけ。
すぐに逆の腕の反撃。思ったより早い!
だけどその一撃は、光沢のある透明な壁に阻まれる。その面の四方には、紙人形が。
「言っただろう。援護であれば十全に行える、と。」
次の一手、反撃を防御され一瞬動きが止まったところに、同じ場所にもう一撃。
やはり完全切断には至らない。それでも傷跡に大きくえぐり込む。
その腕で強引に殴りかかろうとしたのだろう、動きと共に、ぶちぶちとえぐい音が響く。
与えた傷が亀裂となり広がり、腕を構成する数本の蔦の内2本が切断され、黒い煙状になって消失する。
並行して、ソウクロウの紙人形の流れ。途中で4体ずつ流れから離れ、ポジションを取る。
結果仕上がったのは、眼前に伸びる結界の階段。行け、という事か。
いいだろう、乗ってやろうじゃないか。登り階段だろうと、土と根の足場よりはよっぽど楽だ。
同時にウルフを逆側に走らせる。どちらを狙おうか一瞬迷う蔦の巨人、結果選んだのはウルフの方だった。
結果、こちらに差し出されるのは背面。それも丁度殴りかかりやすい位置に。
そこに斧の一撃、だけではやはり足りない。ならばと思い切って飛び掛かり蹴りを。最早踏みつけに近い位置取りだが。
元々安定してるとは言えない体勢に追加の重量、蔦の巨人が両腕をつく。
同時にそこから見える、2体の紙人形と、その間にワイヤー状に貼られた魔力。それが蔦の本数が減った腕に巻き付き、動きを鈍らせる。
咄嗟にそこにウルフの頭突きで追撃。支えとして不十分になり、足場にしてる胴体がぐらつく。このままでは自分も諸共だ、と近くの結界足場へと撤退。
その跳躍の反動で蔦の巨人は大きくバランスを崩し、地に伏した。