130話 追加メンバー②
買い物を済ませ、帰り道。
…また、なにやらこの辺りでは見ない人影。ただ、今度は見覚え自体はある。
あんな目立つ白狐の人、忘れる訳が無い。この間オカルト研究同好会で対面した、アイナってやつだ。
けど、何でこの場所に?
とりあえず今は関わりたくない相手だ。どうにかこっそりと──
「あー! お前あの時の!」
…やっぱり素通りできなかったか。
「声でけーよこっちのセリフだよ何でこんなとこに居るんだよ。」
などと言ってる間に、距離を詰められて。
「ってんな事より!
あのオカ研の奴話になんねーの。だから代わりにお前が情報よこしやがれ!」
どうやらあの後、ソウクロウがうまくあしらって済んだらしい。
でまぁ流れ弾というか、あの場に居た事による遅延被弾というか。
…キリの話からするに、大本の東妖衆的には至って真面目な案件なのだろう。
けどこいつ個人として動かすのは事態がこじれそうだし、そういう事はソウクロウに一任するためにも、この場はうまい事流したい。
こいつを介して何かするくらいなら、キリに頼んで取り次いでもらう方が確実だろうし。
「悪いけど、俺急いでるから。」
「に・が・さ・ねーぞぉ。さぁ言え! どうせなんかやべー情報隠し持ってんだろ!」
だめだ先回りされて簡単には通してくれない。ため息ののち、言葉を返す。
「わかったわかった。で、具体的に何が聞きたいんだ?」
「決まってんだろ、この辺の事だよ!」
「具体的に。」
「それは、えっと…色々!」
ソウクロウとのやりとりを思い出し、もしかしたらとは思ったが、シンプルな押しに弱いんだなこいつ。
からかうのは程々に、話が通じそうな状態になったしここで思案。
自分の判断で流せない情報もある。そこに触れられると、返答に困る。
なら、こっちから誘導をかけてやれば。
「例えばほら、何者か、とかさ。」
「そうだそれだ! そいやまだ名前も聞いてねーじゃんか!
何者なんだよお前!」
…分かれば御しやすいのは、まぁ助かるところか。
「俺はユート、妖術師…ってやつになるのかな。
さぁ次はお前の番だ。」
「そ、そうだな、名乗られた以上は……。
古塚 相奈、東妖衆小野里組…の見習いだ。」
「…見習いなんてあるんだな。」
「そーなんだよ! だからこの初任務、しくるわけにはいかねーんだよ!」
「で、結局ここで何をしてたわけ?」
一周して、最初に気になった事を。
「それが、えーっとだな……。
…道に迷ったんだよ。だから案内しろ!」
「って言われても、どこに行きたいのかが分かんないんだよこっちは。」
「じゃー勝手についてく!」
そう言い、今度は俺のすぐ後ろに回り込む。
そこから先は静かなもので。
あえて回り道してどこかで目的地に引っかかれば、と思ったがそうもいかず。
そんな途中、ふと思う嫌な予感。
そしてそれは、到着と共に確定となった。
「あー! そうそうここだよ!
じゃ、あたしはここで。じゃーな!」
そう言い駆けて行った先は、うちのアパートの空室だった一室だった。