13話 身近なファンタジー⑤
見た目の上では、エルフ以上にファンタジー的な存在。
なのに、それを知った今は「最初からずっとそうだった」ように思っている。
いや、実際そうだったのだろう。だけど思い出そうとするほど記憶が混乱していく。狐につままれるとはまさにこういう状態だろう。相手は狸だが。
一瞬吹いた強い風に吹かれ揺れる尻尾に、つい目が向かう。
「…今分かった、って顔だな」
そう言うキリは、ちょっと呆れた様子だった。
「で、改めて聞くが。
何か用なの?」
頼まれて、と言おうと思ったが、今の状況を作ったのは自分だ。
ただ頼まれただけにしては、自分はあまりにも乗り気だった。
その根源を辿ると──
「…強いて言えば好奇心、かなぁ。
『そういう存在』の事、最近知ったばっかりで。」
「なるほど。で、結果には満足?」
なんだかんだで当初の目標は達した状態ではある。
だけど、そうと分かると更に気になる事は出てきてしまう。
「じゃあ俺が気付いてなかっただけで、他にも…?」
「まぁ、いるだろうな。ただうちは偶然で見かけた事はまだあんま──
ってそうじゃなくて!」
一度区切りを置き、キリが続ける。
「…まぁ、思うところがないならいいや。この事内緒にさえしてくれりゃ。」
そう言い、駅の方へと引き返していく。
「なんだ、まだ他にこの辺に用事でもあんのか?」
一息ついて、冷静な思考が戻ってくる。
「…悪い、隠し事詮索して。」
「いーよ別に。うちも100%隠し通せるとは思ってなかったし、たまたまその日が今日だってだけで。」