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116話 災禍と相対し①

「緊急事態です!

 ヒュージ・フラベラの群れ、来ます!」

 鳴り響く鐘の音、明らかにただ事ではないナナノハの伝令。

 先に反応したのはエンだった。

「何があったの?」

「ヒュージ・フラベラの軌道が例年より大きく変動、冒険団の対処が十全に届かず、多数の逃しが来るとの事です。

 エンさんも助力を!」

「分かった。」

「ユートさんも一緒に。その方が安全です。」



「安全がどうとか、そんな大ごとなのか? そのヒュージなんとかってやつは。」

 エンが別行動となり、前を歩くナナノハに聞く。

「『ヒュージ・フラベラ』というのは空を泳ぐ巨大な魔物、その群れは通行するだけで災害のようなものです。

 本来なら街の外で対処をするのですが、それをあちらに覚えられたのでしょうか、その場所をさけて来てしまったようです。」

「災害って…そんなになのか?」

「見れば分かると思います。」



 周りも既に動き始めていて、慌ただしくなってる。

 中庭に扉が面した倉庫から物資を運び出す、ここの竜人達。

 事前に予期はしてたのだろう。手早い団体行動だ。

 そしてカプセルのようなものを、それぞれいくつか抱えて空へと飛び立っていく


 その向こうにあるものが見えるまで、そう時間はかからなかった。

 浮遊する巨大なクジラの群れ。距離感覚がおかしくなる程のサイズだ。

 建物群より少しだけ高い所を泳いでいる。全体がゆるやかな丘になってる街だ、このままの軌道でいくといずれ建物に当たる。

 …そういう事か。


 そして竜人達とは別の所から、飛び立つ姿ひとつ。

 純白の竜の上に乗る真っ黒の騎手。あれはエンか。

 先陣を切り、周囲に雷を球体状に展開、そしてそれを弾けさせる。

「あれ、大丈夫なのか?」

「驚かせて進路をズラすのが目的ですし、威力は下げてるでしょう。」

 確かに派手に炸裂させてる割には、周囲の建物に焦げ跡ひとつ付いていない。

 そしてビビったクジラが少し横に道を逸れる。同時に少し高度が下がったのもいるのか、建物との接点で砂埃が舞う。


 その次に構える形で、さっきの竜人部隊が対処にあたる。

 閃光爆弾だろうか、いくつものフラッシュが見える。

 それでも効力が低いのか、中々進路を変えてくれない。



「…苦戦していますね。」

「ナナノハは行かないのか?」

「残念ですが、ボクの戦い方はこの場所とは相性が悪く……。」

 そうか、そうだよな。市街地じゃ行動に制限がかかる事もあるか。

 かく言う自分も、この状況で別に何かできるわけでもない。もどかしい。


 立ち止まったところで、子供ドラゴンが追い付いてくる。

 付いてきてるのは確認してきたが、それでもいつものように一定の距離を保っていた。

 それが、今は寄ってきてくれてる。漠然とした動きではなく、明らかに自分に向かって。

 こんな時に嬉しくなってしまってるところに、短く一言、頭の中に響いた。

『力、貸して。』

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