114話 「かつての仲間」の助力を経て③
気が付いた時には、ベッドの淵にもたれかかっていた。
時計は7時頃を指してて、多分朝の方かな。
この部屋、窓が無くて直感的に時間が分からない。
てかこの世界って時計あるんだな。どれくらい普及してるんだろう。
とかぼんやり考えてる間に、少しずつ頭が冴えてくる。
確かこの部屋に来た後、エンがこの場を離れられないからと指示を受けて。主に食料やらエンの私物の運び作業。
途中でここの人を見かけたりもしたな。様々な色の鱗の、竜人といった様相の人たち。向こうからしたら、俺の方が珍しい存在だったのかな。
それで疲れ果てて……ここで気を失ってた訳か。
そして、例の子供ドラゴンは与えられた飯にがっついていた。
ずっとその呼び方でいいのかとは一度思ったが、どうせ自分はじきに元の世界に帰るんだ、程々の距離感を保った方が後悔は無いだろう、と昨日の内に決めた。
ツノには何やら輪がはめられていて、頭を揺らす度にカラカラと音を立てている。不規則な模様が溝として掘られている、これも魔術的な道具だろうか。
そんな傍ら、エンはデスクの方でぐったりしていた。
「あ、起きた…?」
…もしかして徹夜してたのか?
「その輪、応急処置だから外れたらつけてあげて。
何かあったら、その時に起こして……。」
言葉をかける隙間の無いまま、そう言い残しふらふらとベッドまで行き倒れ込む。
ただ無防備すぎやしないかな。まぁ警戒されるよりはそっちの方が助かるけども。
それでもエンの方はまだ分かる。「ナナノハが信用してる相手だから」だとか、何らかの理由の上でだろうし。
けど子供ドラゴンの方のこれは如何なもんだろうか。
仮にも野生暮らししてた奴だよな? そんな無警戒に、一心不乱に飯にがっついてていいものなのか?
こっちの動きを全く気にしてないし、もっとこう、食い物を疑うとかそういうのとかないのか?
…………。
でもまぁ、元気になったのを見てると、なんだか安心感。
理屈とかどうでもよくなる程のものが、そこにはあった。