109話 出会った存在①
考えてみれば居るだろうなとは思うものの、いざ実際に目にするとちょっと感動するものがあった。
細長い体躯に太い尻尾、空のように鮮やかな水色の鱗、翼を持ったトカゲ、小さいながらもドラゴンだった。
「こいつが異変の原因ってやつ、なのか?」
「おそらくそうでしょう。
幼体といえど、竜は魔力の宝庫。居るだけで環境が変わってしまう事も、珍しくないそうです。」
「…その割にはこの辺あっけなかったというか、なんというか……。」
何事もなくという安心感と、特に何も起こらなかった肩透かしと。
「大体の魔物は慣れない魔力をさけて、違う場所へと逃げていった、という次第でしょうか。そして天敵の居なくなった場所に、僅かに魔物が戻ってきた、と。
なんにせよ、対処する必要はありそうですね。」
「対処って…その、討伐するのか?」
「盟約上は、そういう択も取れますね。」
湧いてくる躊躇。いざ直面して、自分の覚悟の甘さ、思慮の浅さを感じる。
霊体とかではなく、生物の命を奪う、あるいはそれに立ち会う覚悟。
漠然としたためらいが興味と混ざり合い、体調すぐれず混沌とした思考の中で甘えとも取れる返答へとつながる。
「じゃあ、助けるって択もあるのか?」
「そうですね。無防備なのを、討伐依頼でもないのに…というのは、気が引けますし。」
どうやら自分が意見を言うまでもなかったらしい。
既にナナノハは行動に移っていて、おもむろにその子供ドラゴンを抱え上げる。
「環境的にもこんな状態で長居させるのは悪影響ですし、急ぎましょう。」