108話 そして異界を探索し②
1時間程歩いただろうか、森まで到着。
草木や土のにおい、視界の悪さ。「くくり蔦」の事を思い返し、気を引き締める。
先を歩くナナノハを追い、どんどん深くへと進んでいく。
いつものようにウルフを召喚し、自分なりに周囲を警戒する。
ずっと警戒キープしてたら途中でへばってしまう気はする。だけど、塩梅というかペース配分が分からない。
…多少はナナノハに甘えてもいいのかな、それくらいは。
けど、そんな緊張も空回りに、全然魔物と遭遇しない。
時々何か小さいものが走る音がするが、特にこちらに向かってくる様子も無く。
けど、別途上がってきた問題事。
初日の時のと同じような、具合の悪さ。
でももう慣れ始めてきている。息苦しさはまだあるが、ウルフの維持はできている。
そしてたどり着く中心地。
ギリ小動物と呼べるサイズの魔物が3匹、そいつらに取り囲まれてるなにかが1匹。
…3匹のが1匹のを寝床にしている?
3匹の方がこちらに気付き、警戒態勢。
そうだ、このイタチみたいなやつ。あっちの麗辺駅前で見たやつだ。
下手な刺激を与えないよう、ナナノハが静かに行動に移る。
手のひらを地に着け、袖から流れ出るる水を前方に広げていく。
そうして標的周囲の地面を覆ったところで、一気に捕らえにかかる。
捕らえた、けど2匹だけ。水のドームが閉じる直前に、1匹が隙間から逃げ出す。
ちょっとびびりはしたが、今はもう前の時とは違う。反射的にウルフで迎え撃つ。
自分でも驚いた。
着地したウルフの牙は、綺麗に魔物の脇腹を捉えていた。
ちょっと関心しちゃった隙に魔物は脱出しどこかへと逃げ去ってしまったが、今回はそれでいいのだろう。
ナナノハの方も水で2匹を捕らえ、牢が解かれ、下敷きにされていたものが露わになる。
考えてみれば居るだろうなとは思うものの、いざ実際に目にするとちょっと感動するものがあった。
細長い体躯に太い尻尾、空のように鮮やかな水色の鱗、翼を持ったトカゲ、小さいながらもドラゴンだった。