105/231
105話 より魔術は「形」になった①
ナナノハが戻ってきたのは、昼を大分過ぎてからだった。
「おかえり。どうだった?」
ナナノハが床に荷物を下ろしながら答える。
「とりあえず、ひとつ依頼は貰ってきました。ついでに、その準備を少々。」
ふと言葉の中に耳に引っかかる単語。少しの思考時間ののち、質問を投げる。
「ちょっと気になったんだけどさ。
完全に想像からの話でアレだけど、冒険者ギルドとか依頼とかそういうの、あったりするのか?」
「残念ながら──」
「…やっぱり創作上の存在だよなぁ、あんなの。」
「存在はしています。」
「いやあるんかい!」
「けどこの街にはありません。」
「あぁ、そういう事ね。」
「なので形式上、ボク個人への仕事の手伝い、という形になりますね。」
実在するなら見てみたくはあったが、厳しいのなら致し方あるまい。
「それで、少しお時間よろしいでしょうか?」
部屋の出口に向かいながら、ナナノハが問う。
「まぁ、時間なら持て余してるところだし。」
「なら、屋上までお願いします。
戦力としてのユートさんを、一度見ておきたいので。」