104話 養生と思案の末⑥
三兄弟の質問攻め第一波を捌いたのち、第二波が来る前にちょっとお出かけ。
…というのも、昨日昼から何も食べてなくて、流石に空腹の限界だった。
ナナノハは上に掛け合ってみるとの事で別行動、そして自分は一時的に単独行動だ。
とりあえず三兄弟にお勧めされた所に向かってみている。
自動車の走らない、石タイルで舗装された道。見慣れない建築様式の建物の並びに、街行く人々の服装。
未だにテーマパークにでも来たような感覚が抜けないし、いっそそう思った方が気楽かもしれない。
土地勘なんて全く無いんだ、寄り道はせずに目的を確実に。
そうしてたどり着いたレストラン街。
だけど文字が読めるわけではない、看板がなんて書いてあるのか分からない。ハルルも向こうの世界に来た時、こんな感じだったのだろうか。
料理自体の見た目で判断するしかない。となると、こういうがっつり店舗構えてる所より、現物が見える屋台型の方がいいか。
あまりうろうろしすぎると道を見失いそうだし、近い場所でさっと決めよう。
そうして持ち帰りしてきて活動拠点の部屋へ。猫の三兄弟は出掛けたのだろうか、ここまで出会わなかった。
買ってきた物を卓上に広げる。紙箱3箱分だ。
流石にプラスチックやビニールとかは普及してないようだが、こういういわゆる現代的な紙製フードパックが、こっちの世界とアンマッチ感。
選んだ店も、反射的に向かったのは見覚えの強い品の所。まさか中華料理を見かけるとは思わなかった。
…いや、まだ見た目だけだ。実際にそうなのかはまだ分からない。というか空腹の限界だ、さっさといただいちゃおう。
まずはシュウマイと思われる物。店頭でかけてきた、醤油のようなソース付きだ。
で早速1個目。肉のぎっしり感が空腹に染み渡る。けど想像してたシュウマイとはかなり違う。
まず肉に練り込まれた胡椒系のスパイス。これだけでも結構いける。
そして黒いソースは柑橘系…柚子に近いか? 系統の組み合わせ自体は定番だが、それがうまいからこその定番。
次々にと箸…もといフォークが進み、いつの間にか6個が全部無くなっていた。
そのままの勢いで、次に中華まん。見た目はあんまんの形だが、既に見た目に騙された後、先入観は持たずに齧りつく。
…淡泊、というより中身なし? 何か他のと合わせる用のやつか?
けどそれならば、と途中のまま次へと移行。
最後の箱は、麻婆に鶏肉が入ったようなもの。がっつく前にちょっと味見。
これは見た目通りの馴染みある味だ。それなら丁度いい。
さっきの中華まんの皮を程よい大きさに千切って入れ、肉と一緒に。
鋭い辛みが皮に染みて丁度いい。肉にも当然のように辛さが合う。
…でもやっぱり辛い。唇がひりひりしてきた。