第4話 お気を付けて、行ってらっしゃいませ。
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「魔女の分際で人間様を待たせるな!!!」
……。もうこのお話、30分くらいでしょうか…。
「しかも転移魔法のミスで庭に入ったなんて、王族に見つかったら俺が怒られるんだぞ!くそ魔女が!」
…実は、見つかってしまったんですけどね…。
「あそこは、魔女なんかが入っていい場所じゃねぇんだよ!」
「…はい。申し訳ございませんでした。」
「…ちっ。くそが。」
使用人の方が帰っていきました…。なんとか納品できて良かったです。
なんとか間に合ったと思っていたのですが、あの使用人の方の時計では2分ほど遅れていたようで、酷く叱られてしまいました…。
「はぁ…。今日はこれくらいで済んで良かったです。」
たまに、遅れてもないのに怒鳴ってきたり、殴ってきたりする方もいるので、今回はとてもマシな方でした。
魔法が使えるってだけで、人間という部類から外されて、道具として扱われる…。このことは、当たり前のことで、いちいち考えるまでもない事だと思っていたのですが…。
あの方は、魔女の私に、謝ったりお礼を言ってくださった。
とてもくすぐったい感覚です…。
私は、その後使用人の方に30分ほどのお説教を食らってしまったのにも関わらず、口角が緩んで緩んで仕方ありませんでした。
「…ふふっ。一生忘れません。」
帰り道は、歩いて帰りましょう。今日は、歩いてみたい気分です。
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ウィッチハウスに着きました…。この時間なら皆さんは今頃…。
ガチャッ…
玄関の扉を開けると、魔女の皆さんが集まって泣いていたり、嘆いたり、死んだような顔をしたりしていました。
皆さんは、死ぬのが、殺すのが、仲間が消えるのが、怖くて怖くてたまらなくて…。遠征に行く前は、大体いつも皆さんこの様子です。
「…う、うぅ。死にたく…ないよぉ。」
「絶対、死なないでね…。死んだら…いやぁ。」
「ああああああああぁぁぁ。」
「……う、うぇ。」
誰も帰ってきた私の事なんて目もくれず、ひたすら目の前の恐怖と向き合っています。
今は、そっとしておきましょう…。
最初は、皆さんの心のケアを少しでもできないかと遠征に行く前はよく温かいホットミルクを用意したりしていましたが…。吐いてしまったり、余計泣いてしまったり、私のことを殺そうとしたり…。
この時の皆さんは、正気ではないのです。まぁ、戦場に向かうのに正気になれる人なんていないですよね。
私は、そっとしておくことしか皆さんの支えになれません。
私は、宝石魔女だから…。
戦場なんて立ったことが無いし、どれだけ恐ろしいかは皆さんの様子から想像することしかできません。
「皆さん…お気をつけて、行ってらっしゃいませ。」
私は、一言皆さんに挨拶をして、自室へと戻りました。誰にも届かない挨拶。でも、これだけは言わないと…。
皆さんがスっと消えてしまいそうな…暗い暗い底に堕ちてしまいそうな…。
私には、皆さんがそういう風に見えます。
私は、どれだけ冷たくされても、暴言を吐かれても。皆さんとお友達になりたいと思うのは…。
もしかしたら、同情に近い何かなのかもしれません…。
皆さんの助けになりたい。皆さんを支えたい。でも、宝石魔女という重荷と、皆さんの大きな闇が…私には難しい課題です。
不思議です。辛いのは皆さんなのに…私は安全な場所でこの後、仕事をするだけなのに…。
「…涙が、止まりません…。」
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自室で、惨めな涙を流すだけ流して、仕事部屋へと向かいました。
その途中、玄関の前を通りましたが、皆さんの姿はもうありませんでした…。
今日の仕事は、宝石好きな王様の新しい服につける宝石を作る仕事でした。今回はそれほど多くないようなので、夜までには終わりそうです。
気持ちが落ち着いている今のうちに、サクッと終わらせてしまいましょう…。
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22時…。すっかり遅くなってしまいましたね。明日の14時に納品なので、明日はゆっくり歩いて王宮へ向かいましょう。ついでに、街で食料を買って…それから、また仕事。
もし明日、時間があれば、新しい朝ごはんの試作をしてみましょう…。
喜んではくれなくても、食べてくれる。迷惑かもしれないけど、私は、皆さんに朝ごはんを作りたいです。
遠征から帰ると、皆さんすごくやつれているから、私からごはんを差し出されるなんて、ムカついてしまうんでしょうけど…。
食べてくれるだけで、私は、嬉しいです。
でも、いつも想像してしまいます。私の作る朝ごはんを喜んで食べてくれる皆さんの様子を…。そして、私の事を見てくれる皆さんを…。
朝ごはんを作っている時だけは、そんな想像で私は幸せになれるんです。
だから、私は、また朝ごはんを作りたいです…。
「…また、涙が…。」
…寂しいです。
……To be continued




