6話
1章
夜のとばりが完全に降りて、太陽が見えなくなった深夜。夜安は夜の学校へと来ていた。
「遅い。」
「ごめんって。後で何か買ってやるから許してよ。」
「とっとと行くぞ。」
その先に待っていたのは蓮離鏡で、夜安は鏡に遅れたことを謝る。
「とりあえず、お前が前回見たのはどこだって?」
「病院だよ。町はずれにある墓場の方に向かっていった。多分、火車だと思う。」
夜安がそういうと、鏡は墓地がある方に歩き出す。それに合わせて夜安もついてくる。二人が向かうのは、最近生きた人間まで攫いだした、死体を攫う妖怪として有名な火車が住処にしているであろう場所だ。
「わかった。さっさとやっておわらせるぞ。」
「…本当に倒しちゃうの?」
「阿呆か。すでに人間にも被害が出てるってお前が言ったんだろ。さっさと倒さなきゃ、次は確実にお前が狙われるぞ。」
「そんなこと、ないと思うけど。」
「そういって今月あいつらに襲われたの何回目だ?言ってみろ。」
「……前回の人体モデルでめでたく15回目です。」
道中そんな話をしながら、二人は暗い夜道を進んで行く。一つしかない峠を越さなければ都会の方にいけない隔離されたこの町は、否かといっていいほど殺風景で、中心から外れれば、街灯さえないところの方が多い。
山や海もあるこの街は、過ごしやすい場所ではあるが、その分アヤカシ者も多い。
「そういえば、朝のあいつ、なんなんだ?」
「朝?あぁ、葉風のこと?」
「そう、あいつといつ関わったんだ?」
「昨日だよ。人体モデルに追われてるところを助けてくれたんだ。灯我も家系的にあれらに詳しいらしくて。あ!鏡も話す?いいやつだよ。」
「いや、遠慮する。」
えーと声を上げる夜安を無視して、鏡はたどり着いた墓地をどんどん進んでいく。すると墓地の一部が不自然に明るくなっていた。
「鏡待ってよ!」
「静かにしろ馬鹿。……いたぞ。」
二人が息をひそめ、墓石の隙間からのぞくと、そこには炎と車輪を体の周りに浮かせた猫のような炎のようなアヤカシ者がいた。周りには、病院から持ち出したであろう死体と気絶した人間がいた。
「とっとと終わらせるぞ。」
「あ!待ってよ。」
鏡は墓石の陰から出て、服に隠れた右腕をあらわにした。その腕は、肉がむき出しになり、周辺の部分も焼けただれたような状態になっていた。
そして、どこからともなく出現させた水の弾で勢いよく火車を打ち抜いた。
「ぎにゃぁ!!な、なんだてめぇは!!」
「お前が最近人間攫ってるやつか?」
「…誰かと思えば百鬼のところの…なんだ?欲しかったのか?」
「別に欲しくねぇよ。」
ケタケタと、口角を上げ気味の悪い笑顔を浮かべる火車とは正反対に、無表情を貫く鏡。そんな様子を見て、夜安は静かに焦る。
あのまま、あそこに気絶した人たちを置いていくと、必ず戦いに巻き込まれてしまう。どうにかして安全なところに移さなくてはいけない。
「ん?おまえ、やけにうまそうな匂いがすんな?なんでだ?なんでだ?」
「…うるせぇな、お前。」
「いや、違うな、お前からもうまそうな匂いがするけど、もっと強いにおいがする…」
ゆっくりと、火車が辺りを見渡す。それに合わせるように、火車の周りに浮いてた火の玉が周辺の墓石を照らす。すると墓石に隠れていた夜安の体が照らされて、火車と目があった。
「見つけたぁ……!!」
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