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ぼくのお姉ちゃんは悪役令嬢  作者: つこさん。


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18 あたしは次に進もう


 夕方に家の前まで、お姫様馬車で送ってもらった。

 ジェグロヴァ公爵家の馬車が日に二度も現れて、下位貴族ばかりが集まっている我が家の周りはちょっとした騒ぎになった。

 ポフメルキナ子爵家が私的に高位貴族、しかも名家とつながりがあるってわかって、隣家数件から様子伺いの挨拶が来る。

 べつにこれまで近所付き合いに苦労とかはしたことないけど、今まで見えてなかったどす黒いものを見てしまった気がしてちょっと嫌になった。


 ばあやも、あと数人の家人たちも、あたしがジェグロヴァ家のご嫡男と『友人』であることをとにかく喜んでいた。

 シナリオとかゲームのことばっかり考えてて、こういう流れになることはぜんぜん予想していなくて、ちょっとげんなり。

 夕飯もすぐ済ませて、あたしは部屋にこもった。

 いろいろ頭の中を整理したかったし。


 レオニートくんの『前』の話は正直ショックで、あたしの中ではもう、あのニュースの中の悲劇の子だって確定している。

 続報を知らないのは、あたしがそれを聞く前に死んでしまったからだと思う。

 時期的にも、たぶんそんな感じだ。


『前』のことを考える。

 これまでもしてきたように。


 レオニートくんとは『前』の記憶を共有できると、懐かしいねって言い合えると勝手に期待していた。

 それができなくて残念な気持ちが、やり場を失った喜びをぐるぐる回して悲しみに変えた。

 すごく寂しくて、ベッドの上で体育座りしてひとりで泣く。

 べつに否定されたわけではないけれど。

 でもそんな気持ちになってしまった。

 あたしが『前』の記憶を大切にしているのは、いけないことのように思えてしまった。


「会いたいよ……ママ、パパ……」


 もちろん、『ここ』のパパとママも大好き。

 でも、あたしにとって『前』も否定できない現実なんだ。


 レオニートくんにとって、きっと『前』はそれほど良い思い出ではないんだろうことはわかった。

 だから、あたしと違って『ゲーム』を意識しないで行動できるんだろう。

 それはある意味うらやましいことで、きっとあたしはそれを見習うべきなんだと思う。


 あたしは、机に向かって引き出しから一冊のノートを取り出した。

 それはずっと前……もう二年半も前だ。

 あたしが『前』を思い出したときに作ったノートだった。


 みんなの名前……忘れたくなくて、一生懸命みんなの名前を書いた。

 ママ、パパ、お兄ちゃん、ゆっこ、あき、金澤先輩、土井ちゃん、えりか、副担のケロヨン、岸川センセ、黒タソ、たこやきくん、お嬢、つばっきー、中野、うさこ、まさぽん……


 ノートの続きに、ひとりひとりにお手紙を書く。

 最後の行には、みんなに『バイバイ。』って書いた。

 ずっと泣きながら書いた。

 届かないの知ってるけど書いた。

 途中で、ドア越しにばあやが声をかけてくれたけど、だいじょうぶって言って最後まで書いた。


 みんな、バイバイ。

 大好きだよ、ずっと。

 涙がかかって何箇所もインクがにじんだ。

 会いたいよ、きっとこれからもずっと。


 でもね、あたし、『ここ』で生きなきゃいけないんだ。

 ここはね、『ゲーム』の世界だけど、あたしにとっての『今』なんだ。

 みんなとはもう、いっしょに歩けない。


 ずっと、『ゲーム』だって思い込むことで、あたしはそのことを直視しないようにしてきた。

 もう、『前』は終わったことなんだって、あたしはもう違うあたしを始めているんだって、わかってたけど、認めたくなかった。


 ねえみんな、あたし、ここでも大事な人がたくさんできたよ。

 その人たちと、生きていくね。

 レオニートくんみたいに。

 振り返るのはやめて、ここでしっかり生きるね。

 ありがとう、大好きだよ。


 ――ノートを閉じて、あたしは次に進もう。


 涙を拭いて、あたしは鏡を見た。

 ぐちゃぐちゃの顔でひどくて、思わず笑った。

 その次の瞬間。


 弾けるような音がして、()()()が発光し始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 何度読んでも泣ける
[一言] あーーーー!真実の愛!!!!
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