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ぼくのお姉ちゃんは悪役令嬢  作者: つこさん。


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17 ぼくと『前』


 ポメ(せん)ぱいが『前』の話をして、帰って行ったのを見送った。


 お姉ちゃんは、『シナリオ』にそってさされたらしい。

 きたない言葉をはきたかったけれど、残念ながらぼくはそういう言葉を知らない。

 元々ぼくは『ゲーム』なんかはどうでも良くて、ただお姉ちゃんが幸せになるのを見たいんだ。

 それがこうして『シナリオ』とかいうものがじゃましてきて、とても頭にきている。


 とりあえずお姉ちゃんは助かったけれど、回復にはまだ時間がかかる。

 領地からあわててやってきたパパとママは、ぼくをかわりばんこにぎゅっとだきしめたあと、すぐに病院に向かった。

 ママはもちろん、パパも病院に仕事を持ちこんでまでずっと付きそっているし、どの家人もどことなく不安げだ。


 ぼくも学校を休んでいる。

 こんなときに行きたくない。

 だからといって家にいても、もやもやとした気持ちだけがふくらんで、居ても立ってもいられなくなる。


 お姉ちゃんが第二皇子のこと好きなのは、知ってたけど、お花の件で本当によくわかった。

 だから、お姉ちゃんを幸せにしてくれるなら、第二皇子とお姉ちゃんが(けっ)こんしてもかまわないと今は思っている。

 お姉ちゃんの(はな)よめすがたは、きれいだろうな。

 そう思っていたときに、あんな事件が起きて、ぼくはどうしたら良いのかわからない。

 これが『ゲーム』だなんて言われて、なっとくできるわけがないけど、でも、そうなのもわかっている。

 全力でムシしてやろうと思っていたのに、あっちからかかってこられたら、さけようがないじゃないか。


『ヒロイン』のポメ(せん)ぱいが、ぼくの反対に回らなくてよかったと本当に思う。

 ぼくは、お姉ちゃんが幸せになるならその気持ちを(おう)えんしたいし、ポメ(せん)ぱいも、ものすごく第二皇子が好きってわけでもないみたいだから、ちょっと安心した。


 ポメ(せん)ぱいとは今後定期的に(れん)らくし合おうということになった。

 おたがい、ゲームの通りのエンディングはいやだねってことで、協力して違うルートをさがすことにした。

 でも、バッドエンディングであるポメ(せん)ぱいの実家ぼつ(らく)は、ポメ(せん)ぱいが聖女になれなかったら防げないんじゃないかという話になって(聖女の実家ということで、事業が上手く行くようになるはずだから)、ポメ(せん)ぱいは泣くのをこらえていた。

 これはだれが悪いわけでもないから、ぼくははげまし方がわからなかった。


 ほとんど『ゲーム』の内容を覚えていない自分に、お姉ちゃんをさした犯人と同じくらい頭にきている。

 なにか覚えていたら、ぼくだっていろいろ動けたかもしれないのに。

 どうしたらいいのかわからない。

『シナリオ』に負けないために、どうしたらいいのかわからない。


 ポメ(せん)ぱいは、『前』のことをたくさん覚えていて、それはきっとぼくたちの役に立つと思う。

 それと、ポメ(せん)ぱいは『前』のことが大好きみたいで、ぼくにはそれがよくわからなかったから、びっくりした。

 ぼくにとって『前』は『前』で、もう終わってしまっていたし、『おねえちゃん』のことは思い出して悲しくなるけれど、よくわからない。

 ポメ(せん)ぱいみたいに、『前』のことを大好きじゃないのは、ちょっといけない気がして、ぼくはちょっと悲しい。

 大好きだったら、『前』のこともっとたくさん覚えていられたかな、そしたらお姉ちゃんはさされないですんだかな、と思って、ぼくはちょっと泣いた。


 そんなことをいろいろ考えていたら、あっという間に夜になった。

 夜ごはんをひとりで食べて、いつもならお姉ちゃんがすわっている席にお姉ちゃんが居ないのにぜんぜんなれなくて、ずっとあんまり味がわからない。

 ナイフでさされるのってどれくらい痛いのかな、『前』でママにぶたれたときより痛いかな、と思って、ちょっとだけ手を切ってみようとしたら、あわてて給仕に止められた。

 ごめんね、と言って、ちょっとつかれていたんだ、とぼくはごまかした。


 ベッドにもぐっておやすみを言って、心配そうな顔の侍女を下がらせてから、ぼくはねむれなくてまどから町の方向を見ていた。

 そしたら十時くらいに、とつぜん光のばく(はつ)みたいのがあって、目をつぶった。

 ちょっとしてから目を開けたら、光の柱みたいなのが空にのびていて、夜なのにすごく明るかった。


 それで、ぼくは思い出した。

 これ、たぶん『イベント』だ。

『ヒロイン』が『聖女』になるときの動画が、光の柱みたいのだったはずだ。


 家の中からもざわざわと声が聞こえて、みんながまどに集まっている。

 ぼくはもう一度侍女をよんで、着がえて光の元へ行くと言った。

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