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1 ぼくのお姉ちゃんは悪役令じょう


毎日朝6時に三話投稿、全二十四話です



「ぼくからお姉ちゃんをとらないでください」


 帰ろうとしている()()をつかまえて、ぼくは『じきそ状』を提出した。


「なにを言っているのかわからないよ」


 しらばっくれても美形は美形だった。


 ぼくのお姉ちゃんは悪役(れい)じょう。

 それに気がついたのはぼくが小さいとき。

 ぼくはどうやら転生者というやつらしく、カゼをこじらせて死にかけたことで、お姉ちゃんについてだけはっきりと思い出せた。

 そう、『お姉ちゃん』は、ぼくが前の人生で『あくやくれいじょうイネッサ』ってよんでいた、その人だっていうことを。


 お姉ちゃんはツンデレをきわめちゃった性格で、弟のぼくのことを「わたくしの『どれい』」とよぶ。

『どれい』のぼくは「お姉『ちゃん』」と呼ぶように命令されている。

 理由は教えてくれない。

 そういうところがかわいいと思う。


 ああ、名乗りおくれたけれど、ぼくはレオニート・ジェグロヴァ。

 イネッサ・ジェグロヴァ(こう)しゃく(れい)じょうという美しいしゅく(じょ)の弟だよ。

 レオってよんでくれてかまわない。

 よろしく。


 この国はコマナシスタンと言い、ぼくが今お姉ちゃんといっしょに住んでいるのは、首都マメルーシだ。

 古里であるウニライナ州をはなれて、首都の家(タウンハウス)で生活し勉学にはげんでいる。


 ぼくたちが通っているクリユラシカ皇都学園は歴代の王も通う、ゆいしょある教育機関で、六年間の初等教育、三年間の中等教育、そして二年間の高等教育までを、みんな同じ場所ですごす。

 と言っても、それぞれ建物の入り口はちがうのだけれどね。

 同じ区画にある、総合教育場っていうかんじ。

 ぼくは十二才だから、今年の九月から、初等科で一番上の六年生だ! お姉ちゃんは、最終学年の十一年生になる。

 だから、いっしょに通えるのがあと一年で、ちょっとさみしい。


 そしてぼくの()おくが確かならば、来年の五月末にある最後の終業の鐘(ラストチャイム)とよばれる学園の卒業式典で、お姉ちゃんはこん約者(やくしゃ)の第二皇子に『こん約破(やくは)き』される。

 別にそれ自体はかまわないんだけど、問題はお姉ちゃんがそのあと修道院送りになっちゃうことだ。


 それはまずい、非常にまずい。


『どれい』あつかいされなくなっていいだろうって? ぼくのお姉ちゃん好きをなめないでもらえるかな。

 お姉ちゃんのことしか思い出さないてっていぶりだよ? そこいらのにわかとは気合いがちがう。


 なんとか修道院送りを止めるため、がんばることにしたのさ。


 あ、うん、『こん約破(やくは)き』はしていいよ。

 ぼくがずっとめんどうを見るから。


 とりあえず第二皇子(美形)をつかまえた。

 今は夏休み中で、ときどきうちに遊びに来るからね。

 お姉ちゃんとお茶して、どうでもいい話して、帰っていくんだ。

 それがこん約者(やくしゃ)に対するどーのこーのらしいんだけど、なにか意味があるのかわからない。

 だってお姉ちゃんがはずかしがってツンツンしてるの、皇子はさっぱり理解してないっぽいからね。

 何回来たって同じだよ、この皇子になんてお姉ちゃんを任せられない。

 だから、帰るとき馬車に乗るところを待ちぶせた。


『じきそ状』を受け取ってこまったような顔をしている第二皇子(美形)にぼくははっきりと意見する。

 最初がかん(じん)っていうからね、きっちりわからせてやるのさ。


「あなたは卒業パーティー(ラストチャイム)でぼくのお姉ちゃんを『こん約破(やくは)き』して修道院に送る気でしょう。

 修道院はだめです、会えなくなります。

 国外追放もやめてください、遠すぎます。

 領地で引きこもり命令にしてください。

 いっしょに幸せにくらしますから」


「なにを言っているのかわからないよ」


 しらばっくれても美形は美形だった。


「とにかくそれを読んでください」


 用がすんだからさくっと家にもどる。


 何日かたってから皇子の従者が変な顔して手紙を持って来た。

『じきそ状』の内容についての問い合わせだった。


「バカだな、こんなこともわからないなんて!」


 ぼくはありったけのお姉ちゃん愛をたたきつけて返信してやった。

 ここはわからせてやらないと。


 そしたらまた何日か後に質問の手紙がとどいた。

 やれやれ、なんて物分りが悪いんだ。

 これがコマナシスタン皇国の第二皇子でん()だというのだから先が思いやられるよ。

 しかたがない、ぼくが教えてあげなくちゃ。

 前の人生と合わせたら、たぶんぼくのほうがちょっと年上だしね!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 悪役令嬢弟転生、からのお手紙でわからせとは、なかなかハイレベルですね。 ウニライナ州が気になります。
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