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未定2  作者: 永瀬もも
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未定3

 

「あなたって、気持ち悪いわね」


 入学初日。声がした方に目を向けると、知らない女が席に座って小説を読んでいた俺を、真正面に立って見下ろしている。腰のあたりまであるさらさらの黒い髪、透き通るような白い肌、身長は160センチほどだろうか。大きな目に、吸い込まれそうな黒い瞳、長いまつ毛。薄いピンク色をした綺麗な唇、誰が見ても美人というだろう、端正な顔立ちをしたその女に一瞬目を奪われる。


 今俺は、新しい学園の入学初日になぜか初対面の女の鋭い目に睨まれているところだ。


「気持ち悪いわね」と言われた理由に心当たりはないが、この学園に入学することになった経緯は説明しておこうと思う。





 __________ 一週間ほど前。



白都(はくと)、帰ろうぜ!」


 時刻は午後8時を過ぎた頃。部活を終え帰り支度をしていた俺に、高校に入学してから2か月。同じバスケ部の幼馴染、夏目拓海(なつめたくみ)がいつものように声をかけてくる。


「おう!」


 俺は短く返事をすると、荷物を鞄に詰め込み肩にかけ拓海と共に校門を出る。


「ほんと白都はバスケうまいよなぁ!」


 俺の肩を組むようにして言うと、手に持っていたスポーツドリンクを一気に飲み干し、近くにあるごみ箱にシュートを決めるように空になったペットボトルを投げ入れた。綺麗に弧を描きゴミ箱に入ったのを見届け、俺と拓海は駅の方向へと足を進めた。


 それから15分ほどで駅に着き、ホームで電車が来るのを待っている。次の電車が来るまであと1分ほどの時間に差し掛かった時だった。


「きゃあああああああ」


 俺たちが立っている場所から少し離れたところで、女性の悲鳴が聞こえた。携帯から目を離し、悲鳴が聞こえた方向へ目をやると、小学校低学年くらいの女の子が線路で倒れ、落ちた拍子に頭を打ったのか意識を失っているようだった。


 咄嗟に線路へ飛び降りた。電車の音が近づいて来ているのが分かる。


「白都!! はやく!!」


 女の子を抱きかかえ、俺はホームで腕を伸ばしている拓海へと手渡す。


 電車はもう目の前まで迫っていた。その場にいた女性たちの悲鳴が聞こえる中たくさんの男性が俺の方へ手を伸ばして助けようとしてくれている。その手をつかもうとした時.......




 たくさんの悲鳴の中で俺はの体は宙を飛んだ。



 その瞬間すべてがスローモーションに見える。


「はくとおおおおお!!!!」


 ホームで他の男性と同様に必死に俺を助けようと腕を伸ばす拓海の半泣きの顔で叫ぶ声が響く。



 それが俺の生前最後の光景だった。





 ________________ 目が覚める。


 俺は一人真っ白な空間に居た。辺りを見渡してみるが立方体のような空間に真っ白な壁があるだけだ。


「あー! やっとお目覚めですかー?」


 突然後ろから声がする。びっくりして振り返るとそこには天使の格好をした女が羽をはためかせ宙に浮いている。ひとつに結んでいる金髪の長い髪が、羽が動くと同時に左右に揺れている。瞳は海を連想させる綺麗な水色だ。女性というよりまだどこかに少女のようなあどけなさを感じる天使の格好をした女はこう続けた。


風見(かざみ)白都さん! あなたは転生のチャンスを与えられました! パチパチパチパチー!!」


 満面の笑みで拍手をしどこから出してきたのか大きめの花束を差し出され、半ば強引に受け取らされた。


「あの、意味が分からないんですけど」


 戸惑っていると、またどこから出してきたのか分からないが天使の格好をした女が指をさす方向を見ると目の前の壁にスクリーンのようなものが出てきた。


「じゃあ説明しますね! まずあなたは死にましたー!」


 (やっぱりあの時死んだんだ。何となく分かってた。)


 この女の言ってることはそのテンションで言うことではないと思うが、いちいち指摘するもめんどうだし、早く今の状況を理解したかったのでとやかく言うのはやめた。そこで再びスクリーンに目をやると、そこにはいつも見ていたニュース番組が流れている。俺が電車にはねられて、死んだという内容のニュース原稿を読んでいるキャスターと、中3の時の俺の顔が表示された。中学の卒業アルバムに使われた写真だった。


「白都さんがなぜ死んだのかは理解できていますかー??」


 天使の格好をした女がニュースに表示されている俺の顔面を棒のようなものでトントン叩きながら聞いてくる。


「まぁ、大方の予想はついていますが......。」


「ですよねー!線路に落ちた女の子をかっこよく助けたのにそのまま白都さんは電車にドカーンとはねられて死亡してしまったのですよ!」


 人の死因をよくそんなテンションで語れるよな。と思ったが、面倒なことになりそうなのでまたも口をつぐんだ。天使の格好をした女が続ける。


「それでですね! 他人を助けて死んでしまった可哀想な白都さんに!! なんとなんとー!! 神様が転生のチャンスを与えてくださったのです!」


「はぁ」


「それに!! 今の白都さんのお顔をもーっとイケメンにして転生させてくださる特典付きでーす!」


 (なんだそれ......)


 訳が分からずポカーンとしている俺の開いた口に羽の中から棒付きの飴玉を出してぶち込み、天使の格好をした女はさらに続ける。


「それでは今から白都さんがこれから入学することになる学園を発表しますね!」


「学園...ですか?」


 口の中にぶち込まれた飴を出し、スクリーンから天使の格好をした女の方に目を向ける。


「おっと、その説明を忘れていました!では簡単に説明しますね!」


「......お願いします」


 今度はスクリーンにどこかの都市を上から見たような写真が映し出される。


「これは、国の一部の組織により内密に作られた学園都市の写真なのですが、その名の通りこの都市は主に学園で構成され、3つの地区に分かれているんですっ!」


 天使の格好をした女が言うにはこういう仕組みになっているらしい。


 まず俺は死んだ。可哀想な死に方をした俺に神様が新たな国での転生のチャンスをくれたそうだ。俺の転生先は神様に勝手に決められた、スクリーンに映し出されたこの学園都市みたいだ。この都市は3つの地区に分かれており、それぞれに1学園ずつ、3つの学園で構成されている。天使の格好をした女が言うには、さまざまな場所から16歳の選ばれた男女だけがこの都市に派遣され、それぞれ「魔法」「殺し」「スパイ」の育成を行う学園に振り分けられる。どれも教育がぶっ飛んでいる学園のようだ。各2年ずつ、それぞれの学園に通うことになるらしい。とてもめんどくさそうだ。


「あの、俺転生とかしなくていいので天国に案内してもらっていいですか?」


 めんどうなことはしたくない。それに魔法とか殺しとかスパイとか俺にできるものはひとつもないだろうからな。そう思った俺は天使の格好をした女に言った。


「わかりましたー!では、白都さんの入学する学園を発表しますねー!」


(ちょっと話聞いてたああああ???)


「いや天使さんちょっと待ってください! 俺魔法とか殺しとか無理なんで!!」


「ええええ! せっかく神様が白都さんのために転生のチャンスを与えてくださったのに天国に行きたいなんて言ったら私が怒られちゃうんでやめてくださいよー!!」


 あぁ、だめだ。この女、かなりの自己中だ。


「とにかく! もう拒否権はないんです! 強制です! ていうか一生のお願いですぅ...」


 急にすがるように俺の足にまとわりつく天使の格好をした女。俺の顔をちらちら見ながら見事な泣きまねを披露している。


「ほんとに無理なんで! 行き先を天国に変更してください」


 自己中天使にイライラしながら言うと


「白都さんの気持ちは分かりましたよぉ...じゃあ向かいましょう! レッツゴーー!!」


 足にまとわりつくのを辞め、元気に腕を掲げながら楽しそうに言った。これでやっとこの自己中天使とおさらばできる。変な世界に飛ばされるくらいなら天国でのんびり暮らした方が何倍も幸せだろうからな。天国がどんな場所かは知らないけど。この女と離れられるならそれだけで今の俺には十分だった。



「では、ここに立ってください!!」



 白い空間に青のペンで不格好な円を描いた天使の格好をした女は俺の手を引いてその不格好な青い円の中に誘導する。


「ではわたしもっ!」


 ホッ、と言いながら天使の格好をした女も俺と同様に青い円の中に足をついた。




 それと同時に青い光が俺を包み込む。眩しくて目が開かない。



 ___________30秒ほどっ経っただろうか。




 やがて俺を包みこんでいた青い光がだんだんと弱まり、目を開く。


(ん!?)


 俺が見たものは、またも白っぽい壁。



 辺りを見回す。





 よくある多目的トイレの中の光景。


 隣をみるとさっきまで一緒にいたあの自己中天使に似た女の子の姿があった。顔はほとんど同じだが髪の色が違っていた。さっきの天使は長い金髪を綺麗にひとつに束ねていたが、その女の子は少し明るめの茶色い髪を横に流している。


「あちゃー、使うペンを間違えてしまいました!」


 横に立っている自己中天使に似た女の子が口を開いた。俺が黙ったままその女の子へ目を向ける。


「あ、白都さん! 私、赤いペンを使わなければいけなかったのに間違えて青いペンを使ってしまいましたー! えへへ」


「君はさっきの天使さんなんだよな...?」


「あっ! はい! そうですよ! 天使です!!」


「ここは...天国.......ではないですよね?」


 俺は明らかに天国ではなくただの多目的トイレであるこの場所を指さしながらさっきの天使だと名乗るその女の子に問う。


「えへっ☆」


 語尾に星がついているであろう「えへっ☆」とともにウインクをしているそいつを思いっきり蹴っ飛ばしてやろうかと思った。


「ペンを間違えたって言ってたけど...もしかして赤のペンで円を描いていれば天国に行けたということですか...?」


「あ、いえ! そうではなくてですねー! 白都さんにサプライズで入学する学園発表をしようと思うって神様に相談したところ、この赤のペンで円を描けば、その学校の前まで体が転送されるように設定していただいたのです!」


「じゃあこの青いペンは...?」


「お恥ずかしながら、私はこの姿になると急におトイレに行きたくなることが多くありまして...それを神様に相談したところ!これを使えばすぐにおトイレに行けるよう神様が私にくださったペンなのです!」


 少し顔を赤らめ恥ずかしそうに言う。


「......ん? じゃあ最初から天国に行く選択肢はなかったのかよぉぉぉぉぉ!!!」


 多目的トイレの中に俺の声が響く。


「はいっ!!」


 元気よく手を挙げて返事をするそいつの顔面をぶん殴りたいが、気力もなくその場にへたり込む。


「大丈夫ですか...?」


 急に地面に座り込んだ俺の横にしゃがみ、心配そうに顔を覗き込んできた。


「俺が天国に行きたいといったとき分かったって言ったじゃないか!くそ女!!」


 俺は立ち上がり叫び、しゃがみこんだまま俺を見上げていたそいつをキッ、っと睨むと、唇を噛み締めてうつむいて肩を震わせている。泣いているのか?さすがに言い過ぎたか?


 強く言い過ぎたことを謝ろうとそいつの横に座り顔を覗き込む


「あの.....さ....わるかっ」


「あははははははははははは!!!」


「え...?」


 笑っていた。肩を震わせてたのは笑っていたから。唇を噛み締めて少し涙目になっていたのは笑っていたからだったのだ。一瞬でも謝ろうと思った俺がばかだった。やっぱりこいつはくそ女だ。


「だって..っ....ふふっ」


 目にたまった涙をぬぐいながら立ち上がった。


「私はあの時、()()()()()()()()()分かったといったんです! 天国に行くというのは了承していませんのですっ!」


 仁王立ちに腕組みで、勝ち誇ったように笑っている。


 完全にやられた。あの時は何もかもが理解できなくて頭が混乱してたから特に意識して聞いていなかったのが失敗だった。


「ですが困りました...」


 いつの間に笑いがおさまったのか今度は深刻そうな顔をしている。


「赤のペンは白の間でしか使えないようになってまして、あそこを出た時に消滅してしまったので白都さんにサプライズ学園発表ができなくなってしまいました...残念です...」


(そんなことかよ!!)


 そんなこんなで、というかこのくそ女のせいで俺の天国行きの願いはあっけなく壊されたのだった。俺はこの学園都市で6年もの間、「魔法」「殺し」「スパイ」の教育を強制的に受けなければならなくなったという訳だ。この自己中くそ女....絶対に許さねぇ。


「とりあえずここを出ましょうか!」


 何かを考え込んでいた自己中くそ女はポンっと手を叩くと多目的トイレの扉を勢いよく開けようとする。


「ちょっとまったぁぁぁぁ!!!」


 俺は半分まで開けられたドアを押さえつけ、思いっきり閉め鍵をかけた。


「もう! なんですか!!」


 頬をぷくっと膨らませて腕を組み怒った顔を見せる。


「お前は馬鹿なのか!? 男女で一緒にトイレから出たら外にいる人たちに怪しまれるだろうが!」


 相当な焦りからか俺は早口で言う。


「えぇー? 白都さんはおトイレで私とえっちなことをしようとしているんですかー??」


 自分の胸を手で隠す素振りをして俺をにやにやしながら見てくる。あぁ、5回くらい殴りたい。


「そうじゃなくて、外にいる人たちから見たらそういう風にも見られるってことを言いたいんだ!」


「うふふっ 分かってますよぉ 白都さんさっきの姿よりイケメンになってるからまぁ少しなら...そういうことしてもいいですけどねっ!」


 もうこの女のことはほっとこう。たしか神様がイケメンにして転生してくれるとかいう特典がついてたんだっけな。多目的トイレ内にあった鏡で自分の姿を確認する。


「うわっ」


 鏡に映る自分の姿を確認し、思わず声が漏れる。知らないイケメンがうつっていた。


「神様がですね! この特典を付けたことでみんな喜んで転生して行くっておっしゃっていたんです!」


 (神も神だな!!!!)


「白都さんは、今の自分のお姿に満足されましたか??」


 身長は175センチくらい、男にしてはちょっと長めの癖のない黒髪。前髪が少し目にかかるくらいだ。切れ長の大きな目に高い鼻、唇までもがバランスよく並んでいる。


「まぁ、はい」


  話の流れで返事をしたがたしかに、満足していないと言ったら嘘になる。しかし、こうまで顔が変わっていると自分だと認識するまで随分時間がかかりそうだ。


「それなら良かったです!」


  満足そうな顔をして頷くと、


「さて、そろそろここを出ましょうか!!」


 ガチャっと閉まっていた鍵を開け、多目的トイレのドアに手をかけると、勢いよく開け放った。


「ちょおおおっとまったあああ!!」


 俺は半分まで開かれたドアを咄嗟に抑え、強引に閉め鍵をかけた。


「そんな真っ青な顔してどうしたんですか? 白都さん!」


「お前はバカなの!? 今ここで男と女が堂々と多目的トイレから出てきたのを都市の人が目撃したらどう思われるか分からないのか!?」


「え? 何か問題があるんですか??」


 本当にわかっていないみたいだ。俺は男と女が堂々と多目的トイレから出ていっては行けない理由を簡単にこの女に説明する。


「へぇ……要するに、白都さんは恥ずかしがり屋さんなんですね!!」


 全然わかってねぇ!! この女ぜんっぜん分かってねーよ!


 まぁいい。いくら説明したところでこの女に理解できるとは思えなくなった。


「んー、じゃあまずここから出る方法を考えることからだな」


 と言っても、特にいい案がある訳では無い。別々に出るしか方法はないだろう。


「では私が先に出て外でお待ちしていればよろしいのですね!」


「あぁ、俺はお前が出た10分後に出ることにするからそれまで居なくならないでくれよ?」


「わっかりましたー!」


そう言うと


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