よくよく考えてみれば
あれ、ちょい待て。
悪役令嬢だって!?
せめて男に生まれたかったな………
ん?あれ、前世と前前世の記憶があるなら、力も戻ってるんじゃないか?
俺はこう思った。
よし、人畜無害な初級の光魔法を使って確かめてみよう。
――光魔法。
それは闇魔法とは正反対の属性であり、通常属性(火、水、風、土、等)より扱うのが難しい属性である。
光魔法は級が上がれば上がるほど浄化作用が強くなる。
浄化作用と言えば不死族を簡単に倒すことができる。
初級は、ぼやーんと光るだけだな。
まあ、そんな感じだ。
こういう時、光魔法って便利だよね。
……そもそもこういう時が滅多にない……1兆人に1人にいるかいないかといった方が分かりやすい人もいるだろう。
ああ、ゲームが恋しい。
だってこの世界には電子媒体という存在が無いのだから。
ブラウン管テレビも無ければゲーム機も無い。
運営さん!何かイベントでスマホとか、入手できる方法とか無いんですかね。
「リーナリア様ー。早く支度をして下さい。奥様に叱られますよ?」
おう、忘れてた。
「はーい。」
俺は一応返事をしておいた。
前前世、前世の記憶が覚醒する前の記憶を思い出そうとする。
前世とかの記憶で、今世の記憶が端の方に追いやられていたので、苦労した。
当たり前だ。
2人の記憶をいきなり脳内に突っ込まれたからな……
そうそう、覚醒した時はすごく頭が痛かった。
今でも頭がズキズキしている。
2度目がないといいな。
色々考えながら廊下を歩いていたら、食堂についた。
目の前には大きな扉。
身体強化の魔法を使わなければ開けられそうにない。子供って非力だな…
「旦那様、奥様。お連れしました。」
メイドは扉をノックして言った。
「入ってくれ」
部屋の中から男の人の声がした。
おそらく父だろう。とても威厳のある声だ。
ゲームの事だ。親はきっとイケメンと美女だろう。
まぁ、知ってるんだけどね。
扉が開かれて思った。
広すぎじゃね?いやいやいや、食事をするだけの部屋だよな!?
この部屋の4分の1くらいの広さの部屋でいいよね。それでもまだ広い方だけどさ。
ああ、ここは公爵家だから当たり前なのか。
っと、挨拶しないとな。
「お父様、お母様、おはようございます。今日も良い天気ですね」
しばらくこの挨拶で固定しよう。
「ああ。おはよう、リーナ。」
「あら、おはよう。しっかりと挨拶できて偉いわね。ねぇ?」
「そうだな。流石、私達の娘だ。」
父と母は今日も仲良しだな。
「お父様、お母様、今日は何かご予定はございますの?」
「今日も仕事だ。すまない」
「いえ、お父様が謝る事はございませんわ。悪いのはお父様ではありませんから」
「娘が日に日に大人びてゆく……」
凹む父。
「あら、それは当然だと思いますわ。」
それをバッサリと切り捨てる母。
「ちょっと前まで『英雄ノアの冒険譚』という題名の本を肌身離さず持ち歩いていたのにな。」
「それは関係ないと思いますわ(棒)」
そんな台詞を棒読しながら俺は先程出た『英雄ノアの冒険譚』という単語について考えていた。
え?英雄ノア?
ノアは確か、前前世の俺の名前だったよな。
まさか…な。
念の為、確認しておこう。
「お父様、一応聞きますが……今いる場所、ここの星の名前は?」
「星の名前?ヴィラントだ。あれ?どうした?その顔。」
「……な……な…なんですって⁉︎⁉︎⁉︎」