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文車妖妃 01


 若葉の言葉に『歳神』が炎の円陣へと足を踏み入れる。炎が一段と激しく燃え上がり、闇を終わらせる日の出が如く、炎がその光をゆっくりと、だが力強く光を放ち始め、一際眩しく輝きを放ち――


 そして光が消えると――


 平安時代の姫君といった装いの美しい女性がひとり、そこに立っていた。

 艶やかな単衣に身を包み、その髪は地について尚黒く輝き、その手には漆で塗られたひとつの箱を携えている――が、その箱には情欲や妄執、悲哀といった激情の表情を見せる小さな小さな鬼達が、まるで蟻のように群がっては箱の蓋を開けようと爪を立てている。


「若葉様、文車妖妃、ここに――」

サンに寄り掛かる若葉へと丁寧に頭を下げる、美しき妖怪『文車妖妃』。

「状況は…分かりますね…」

若葉の声に文車妖妃はちらりと上を仰ぎ見て、

「おおよそのところは」

とだけ答えた。その様子に満足した若葉。

「では妖妃、お願いします」

若葉の声に、文車妖妃が両方の手で文箱をしっかりと携えたまま、もう一対の両手で、紐で片方を結わえられた一冊の本を取り出すと、本を開いた。

 何も文字が記されていない、無地の本。だが文車妖妃がクトゥルフを視界に入れたその瞬間、まっさらな本に物凄い速度で文字が記されはじめた。


「では、終わらせましょう――」

そして若葉は()()()()()()()()()()()()()()


本を――閉じてください




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