血戦 03
「いや確かに『魂を縛って使役してほしい』とは言いましたけどね?」
『夕闇の境』から『タタリアン』へと帰還する葛葉一門。その中に姿は無くとも聞こえる別の声があった。
「だからってさぁ…」
その声を宥めるように紫苑が応じる。
「これしかその辺に無かったのだ」
「その辺って」
「夢見殿が悪いんですよ。急に憑代なんて準備できるはずありません」
ざまぁみろと言わんばかりに相志が言う。
「だからってキーホルダーはないんじゃあないかなぁ?!」
紫苑の狩衣、その腰の帯――明らかに異質な黒猫のキーホルダーが揺れている。夢見の声はそこから聞こえていたのだ。
「いやそのお陰で紫苑様のお腰でブラブラさせてもらってるけどね?紫苑様の体温がんぎもぢいぃし、この…紫苑様の匂い…はあ…もうずっとクンカクンカしてられるぅ」
と、悦楽全開の夢見。紫苑は腰から夢見を外し握りしめると、
「それ以上気持ち悪い事を言うと割る」
と地獄の獄卒も震え上がるような顔を見せた。
「すいません調子に乗りました。思っていたよりも極楽でつい…あぁ…この今も紫苑様に全身抱かれてる…」
「相志」
「はい。片が付きましたら八戸港に投げ捨てます」
「わーっ!悪かった悪かった!調子乗ってましたぁー!」
相志の台詞が本気であることを即見抜いた夢見は慌てて謝った。それでも紫苑が自らの腰から外さないのは、この男が必要である事の証左だろう。
「では、早速ですが作戦会議を始めましょう」
夢見の言葉に相志が『タタリアン』のカウンターに八戸市のマップを広げる。
「夢見、貴様ならどう攻める」
紫苑が夢見に尋ねる。夢見はしばらく『う~ん…』と唸ったあと、策を語り始めた。
「では、こういうのは如何でしょう?」




