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血戦 01

 小鳥遊の身柄を物部の使いに託し、紫苑達一行は『夕闇の境』――鬼哭の辻へと向かっていた。

「それにしても2回も若葉ちゃんの血で祟る事になろうとはな…」

先頭を泳ぐこんぺいが切なげに呟いた。

「その前にするべきことがあります」

「ん?なんだい姐さん」

「私はラヴクラフトについて何も知らないのです」

今度は驚いた相志が声を上げた。

「本を読んだのではなかったのですか?」

「…読み難かったんです」

その言葉にチラリと視線を交わす相志とこんぺい。

(寝てたんですね)

(勿論な)

気付かれぬよう小さい溜息を吐く相志。危うく次の言葉を聞き逃すところであった。

「なので詳しそうな奴を呼び出します」

「!?そ、それってまさか……」

「――なにか?」

「いえ…何でもありません…」

そして一行は朱漆と黒漆に塗り分けられた空の境目――『鬼哭の辻』へと辿り着いた。

「それでは支度を」

紫苑の言葉に相志とこんぺいさんが動く。

 相志が十字路――辻の中央へ輪を描くように蝋燭を立てる。

 その蝋燭にこんぺいが近付き、口から細い糸の様な炎を吐いて蝋燭に火を灯す。


 紫苑は左手に骨鈴を持ち、辻の真ん中に並べられた蝋燭の輪へと近付く。

 骨鈴を軽く振ると、骨同士のぶつかり合うカラカラという寂しげな音が周囲に響いた。


「双盃の左 塵玉の右 天を地と成す 逆撫の社」

 

 紫苑が唱えながら、左足の草履をたんたんと踏み鳴らす。印を結ぶ。

 輪を描いた蠟燭の炎が丸く大きく膨れ上がる。


「黄幡の御座は地に伏して 歳破の兵主は我が前に集う」


 四辻の草むら、土の中から。災いの象徴、黒い足首『辻神』が群れ集い出す。


「逢魔が時より出るモノを贄として

 冥府の底より魂よ来たれ

 我が僕となりて怪異きを為せ」


 呪文が違う――通常の『祟り』ではないのか。

 『辻神』が蝋燭で縁取った円の中に飛び込む。すると丸く大きく膨れ上がっていた蝋燭の炎が高く火柱を吹き上げ、左回りに渦を巻き始める。

「我が呼び声に冥府より出よ!」

 渦を巻く火が巨大な炎の竜巻へと変わる。

 炎熱と轟音が掻き消え、煙と土埃が残された『鬼哭の辻』に現れたのは――


「これは……」

男が呆然とした表情で立っていた。

 年の頃は40代。ベージュのストライプスーツには綻びが目立ち、僅かにパーマのかかった長めの髪は脂と埃に汚れている。少し弛んだ目元。無精髭。

 そして向こう側が透ける身体。口元には困惑の表情。

 そして紫苑の姿を認めると――陶酔するような笑みを見せた。


「久しいな、夢見」

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