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弁財天の社 03

「しかしこの神社って何の神様だったんだろ」

『深きもの』の爪跡が残る鳥居をくぐり、島――岩場の頂上まで続く階段を登りながら小鳥遊が尋ねる。

「海沿いだったら大抵は龍神様かと思いますよ」

生き残った海鳥たちが羽を休める岩場を貫く階段を登りきると、焼け落ちた社殿が目に入った。焼け残った柱や石灯籠に黄色いテープの規制線が張られている。

「火事にあったのは数日前ってところね」

ざっくりと全体を見回しながら小鳥遊が呟いた。

「分かるんですか?」

「まだちょっぴり焦げ臭いもの」

「なるほど。しかし見事に何も残っていませんね。『深きもの』は何が目的で…ってちょっとお露さん!入っちゃマズいですって」

小鳥遊が規制線を越えて社殿後に入り込んでゆく。若葉は慌てて声を掛けたが小鳥遊は、

「大丈夫よ。刑事だもん。捜査よ捜査」

と慣れたものである。

 ならば火事場の中は任せよう、と規制線の外側――煤が残る石灯籠や石碑を見て回っていると、丸く刈り整えられたイチイの木陰から白い蛇が顔を覗かせた。

「お露さーん、白い蛇が居ましたー」

「へびぃ?大丈夫ー?」

「お久しぶりです。寿ぎを受けし闇の陰陽師よ」

「はーい。しかも喋りましたー」

「マジかー今そっち行くわー」

瓦礫を掻き分けながら小鳥遊が若葉のところにやって来た。その間、白蛇はおとなしくその場で待ち続けている。

「あらま随分ちっこい蛇だ」

小鳥遊が屈んで白蛇へと顔を近付ける。

「此度の救援、感謝いたします」

白蛇は二人を見て丁寧に頭を下げた。

「しかもご丁寧に挨拶までしてくれるって凄くね?」

「おいしそうでぷ」

「食べちゃダメだよ。だって――」

天色の一言に後退りする白蛇。そんな様子を見ながら若葉が白蛇に声を掛けた。

「この社殿に祭られていた神様ですよね」

すると白蛇はハッキリとそれを肯定した。

「その通りです」

「けど、何でここの神様が私をご存じなのです?」

「私個人ではありませんが、貴女には以前お会いしていますよ」

「以前?私、龍神様にお会いした事なんて…」

若葉が首を捻っていると、白蛇が優しく答えた。

「今は力を削がれこのナリですが――弁財天と申します」

「あっ!『宝船』か!あの時の弁天様が貴方だったんですか?」

「厳密には違います。神というのは多にして一、一にして多ですので。貴女が“宝船”として喚び出した弁財天と私とは別の個体ではありますが、同じ一柱の“弁財天”としては同じという事です」

白蛇=弁財天の解説にふむふむと頷く二人。

「此処で――いや、この町で何があったのか。一体何が起きているのか、教えて頂けますか?」

「其方も何かしらある様ですね…分かりました」

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