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4-2 縊れ鬼(後

「――羽黒」

私が名前を呼ぶと背後の木立の陰からするりと気配が現われました。

 紅色の振袖姿。真っ白い絹布を頭から被っており真っ赤な唇しか伺えないが、そのヴェールの下には目も鼻も存在しない。私の隠れ里の守護者である妖怪『お歯黒べったり』の羽黒さんだ。

「お呼びで御座いますか」

私のやや斜め後方で頭を下げているのが雰囲気で分かる。本当なら振り向いてお話したいのだけれど、厳格な主従関係を求める羽黒さんにはこの方が良いのかな、とそのまま振り返らずに声をかけました。

「この場で祟りを執り行います。画図百鬼夜行 前篇 陰の準備をお願いします」

本当はもっと気楽に「羽黒さん」って話しかけたいのだけれど、羽黒さんがそれを善しとしないのです。なんか偉い人っぽく振舞うって難しいです。

 私がそう言うとツツと近付いてきて横に並び、丁寧に頭を下げる羽黒さん。

「畏まりました――『画図百鬼夜行 前篇 陰』こちらに御座います」

そう言って懐からすい、と指定の本を取り出して私に示してきました。何処に仕舞っていたのかが気になります。

「それでは祟りの仕度を始めるので御座います」

そう言うが早いか、羽黒さんはテキパキと参道に蝋燭を並べ円形を作りはじめました。そして中央に『画図百鬼夜行 前篇 陰』を置き、所作も優雅に身を引きます。

 その様子を見て入れ替わるようにサンが肩から飛び降り、尻尾の先に火を灯して丁寧に蝋燭へと火を点けました。

「神楽鈴に御座います」

サンが火を灯し終えると羽黒が私の前に神楽鈴を差し出します。

 私はそれを受け取ると神楽鈴を前に構え、しゃん、と三度鳴らし、その後静かに鳴らし続ける。

 そして私は呪文の詠唱に入りました。




 金沙羅の左 双盃の右 天より下りて地を満たすもの


 唱えながら、左足の草履をリズム良く強弱をつけてたんたんと踏み鳴らす。

右手を胸の前で握り、人差し指と中指を立て、印を結ぶ。


 寿老の星は南天の地に輝き 歳徳の寿ぎはわが手に満ちる


 不幸の気配が濃密に漂う結界の中に、一瞬爽やかな風が吹き、やがて鈴の音の足音が近付いて来ました。白足袋に赤い鼻緒の雪駄――歳神だ。

 瘴気の中で呼び出せた歳神は5体。このくらいなら何とかなると思う。




 日の出と共に来るもの。

 頭を垂れる稲穂を運ぶ形無き理の貌よ来たれ

 汝が絵姿に寄りてここに現れよ

 慈愛を糧に踊り出で奇跡きを為せ


 中央に置いた本『画図百鬼夜行 前篇 陰』の頁がひとりでにめくれてゆき、そして止まった。


 木の上で風が渦を巻いている。

 その風に撫でられた枝はまるで刃に触れたように断ち斬られている。

 刃の様に鋭く。

 獣の様に狂暴な――

 旋風(つむじかぜ)だ。

 いや。

 風の中央で踊るけだものが居る。

 それともけだものが渦を巻いて風を起こしているのか。

 獣の前足は鋭い鎌の形をしている。

 だが風の様な素早さでは誰の眼にも留まる事は無いだろう。

 だから斬るのだ。

 我、風の中に在りと知らしめる為に。


 そんな絵が、描かれている。


「来たれ断ち切るモノ――窮奇(かまいたち)! 」

その言葉と共に形代を飛ばすと、それに応じて赤い鼻緒の白足袋達が蝋燭で囲まれた輪の中へと一斉に踏み込んだ。

 途端、鼻緒の赤と足袋の白が紅白の渦となって形代に吸い込まれてゆく。そして全ての『歳神』が形代に吸い込まれた途端、円を作るように配置していた蝋燭の炎それぞれが、日の出の様にゆっくりと、しかし次第に強く光を放ち始め、一際眩しく輝きを放ち――


 ようやく目を開けられるようになり辺りを見回すと――


 参道の中央に。


 紋付袴。腰には大小の二刀を提げた――小さな(いたち)がそこに二本足で立っていた。

「これは鼬…侍ですか?」

私が即興で考えた召喚術に瞳をキラキラさせていた紫苑さんが興味津々と言った様子で聞いてきました。

「やば…ちょっと可愛いかも。あ、この子はかまいたちです」

「原典とは趣が随分異なりますね…」

実は意外と可愛いもの好きである相志さんが顔を綻ばせて窮奇(かまいたち)を見ている。うん。実際に可愛いと思います。

「――呼び手の想いに応じたまでの事」

呼び出した窮奇を囲んで話していると、その外見の割に渋い声が聞こえてきました。

「――喋った!?」

驚く私。感心する紫苑さん。そしてほんの少しショックを受けている相志さん。

「人のようなナリをしておる所為だろう」

ふんすと鼻息も荒く腕を組む窮奇さん。


「早速だけどかまいたち、あの魂を束縛する縄を切ってもらえる?神社の霊性を帯びているみたいなんだけど、式神では歯が立たないの」

私は社殿の正面でびちびちと揺れ続けている魂を指差して言いました。すると窮奇は、目標をチラリとだけ見やり、

「――承知」

と言い両手で腰の刀二本をスラリと抜きました――二刀流なんだ。


「我、全てを断ち切る風――参る」


 目の前で旋風が踊った。そう思った瞬間、窮奇の姿は消えていた。

 そして再び風が吹き、姿が見えたと気が付いた時。

 ドサリと音がして、社殿にぶら下がっていた男の魂が地面に落ちていた。

 そして気がつくと、窮奇は私の足下で刀を鞘に納めていました。

「では拙者、これにて失礼仕る」

かまいたち侍はそう言うと、ひとりでに御霊へと戻り、消えてゆきました。


 成功した――大きく安堵の溜息を吐いていると、紫苑さんがすいと近付いてきました。

「羽黒に斬らせるのかと思いましたが…先程のは…一体?」

紫苑さんが不思議そうな顔をしている。あれ、マズかったのかな…?

「っと…思い付きだったんですけど、斬るという目的というか…属性と言うか?それだけに特化させようと呼び出してみました。これなら神社の神性に対抗できるかなと思って…」

鳩というか女神が豆鉄砲を食らったような顔をしている紫苑さん。そして暫く間を置いて、

「先程のような“属性を特化させる”という使い方は、葛葉の歴史でも初めてです――お見事でした」

紫苑さんが私に笑顔を向けている――これは褒められていると思っていいんですよね。ヤバい今夜思い出してニヤニヤが止まらない自信あります。

 などと悦に浸っている時間は無い。神社との繋がりを切り離された祟りは、まるで釣り上げられた魚のように地面でビチビチとのた打ち回っています。


 此処から先は紫苑さんの出番だろう。

「この後はお願いしますね――紫苑さん」

私がそう声を掛けて後ろに身を引くと、紫苑さんが玉砂利を鳴らして前に出ました。

「ありがとう――面白い事になりそうです」


 ――その笑顔が怖いです、紫苑さん。



「こんにちは。お話を聞かせてもらっても宜しいですか?」

祟り――魂に紫苑さんが丁寧に声を掛けました。ですが魂は未だにびちびちと地面をのた打ち回り続けています。

「今まで首を吊り続けてきた、貴方の事ですよ」

しかし紫苑さんに声を掛けられても、顔面を大きく膨張させた魂は目と舌をびちびちと振り回しながらのたうち続けています。が、紫苑さんと目が合ったのでしょう。


 ころすころすころす殺コロすころ殺す殺ころコロころこロ殺ころこころころろろ


 のた打ち回りながら跳ね上がり、その膨れ上がった顔面いっぱいに大きな口を開けて紫苑さんへと飛びかかりました。

「――汚ぇ面近付けんじゃねぇよ」

しかしそれをこんぺいさんが看過する訳も無し。魂の頭上へ現われると、その尾びれで脳天を打ち据えました。

 めきょりという異音とともに地面へ叩き付けられる魂。

「標的も忘れただ殺戮を求める厄種と堕したか」

ちゃり、ちゃり、と玉砂利を踏み鳴らし近付く紫苑さん。地面に横たわりピクピクと震える魂を静かに睥睨しています。

 このまま滅っしちゃったりするのだろうかと見守っていた私ですが、そんな予想とは裏腹に紫苑さんは、そのすらりとした美しい足を後ろへ大きく振りかぶり――


 どげし


 鈍い音と共に大きく吹っ飛ぶ、膨張した顔面。

 蹴った?!もしかして蹴った?!つま先思いっきりめり込んでましたよ!?

 玉砂利を跳び散らし地面を転がる魂をそのままズカズカと追いかける紫苑さん。そしてピクピクと痙攣するその膨張した顔面をガシガシと蹴っては踏み付けていらっしゃいます。実に生き生きと蹴りを食らわせていらっしゃいます。

「何時まで駄々をこねておる。聞く耳すら持たぬかこの痴れ者が」

しかも脅してるというか言葉遣いがいつもと違っています。

「ほれ何とか言え、言わぬか。返事も出来ぬなら生皮剥いで吊るし直してやるぞえ」

怒ると口調が変わると聞いてはいましたが。

「相志さん…紫苑さんのあれってキレてるんですか?楽しんでるんですか?」

私が尋ねると相志さんはそのイケメンフェイスを歪ませながら溜息交じりに、

「楽しんでいる方で良いと思います」

と断言しました。

 うん。私もそうだと思います。

 しかしそのドSな行いが功を奏したのか、狂った魂はその頭部を肥大させたままですが、その瞳には漸く理性の光が戻っていました。


――ひとのこえ――話しかけて――私に話しかけているというのか?

狂った魂が語りかけてきた。頭を踏み付けたまま、紫苑さんがそれに応える。

「しかも踏み付けておるわ。怒りと苦しみに我を忘れたか」


――私はどうなっているのだ

「死後十年が過ぎた」


――やはり…死んでいるのか…

膨張した顔面が少しずつ萎んでいる。やがて魂は悲しそうな表情を浮かべるまでに自我を取り戻していました。けれども紫苑さんはその頭を踏み付ける足を下ろす気配がありません。

「貴様は己に首を括らせた男への怨みと執念で現世に留まった。だがその間も苦しみからは解放されず、無闇に人を襲わんとする鬼へと変じておった」

踏み付けた頭が地面にめり込むのでは無いかという位にギリギリと踏み付けている紫苑さん。


――菅田は…菅田義偉はどうなっている

当時この男性が仕えていたという議員の名前が出てきました。

「次の組閣では官房長官と言われているらしい」

――私はあの男に殺された。自殺を強要された。家族を殺された。罪を被せられた。

紫苑さんの踏み付ける魂――祟りの面持ちが次第に歪んでいきます。眼は吊りあがり口は大きく横に裂け…まさに悪鬼羅刹のように。

「どうしてやりたい?」

――殺してやりたい!引き千切り!貪り!頭から喰らってやりたい!

紫苑さんの足下で悪鬼の形相を見せる男性の魂。足を離せば怒りのままに飛び出して見境無く襲い掛かりそうです。

「だが今の貴様をそのまま解き放っては無関係の者達にまで災いを及ぼす。看過する訳にはゆかぬ」

――なら…ならどうすればよいのだ!許せというのか!金の為に私達家族を葬った、あの外道を許せとでもっ!

踏み付けにされた悪鬼の瞳から涙が流れています。罪を被せられ理不尽に死を強要され、何年も苦しみ続けた魂が怨嗟の涙を流しています。


 そんな魂を足下に見やり紫苑さんは――笑っていました。

 案ずるな、と言って笑っていました。

 慈母の微笑みにも羅刹の嘲りのようにも見える笑みでした。

「私がそなたに力を貸してやろう。ただ殺すだけでは飽き足らぬであろう?」

――あの男を。菅田義偉を殺せるというのか

 紫苑さんが漸く男の魂の頭から足を下ろしました。

「左様。家族の分まで恐怖と苦しみを与えながら、関与した者共まで好きなように始末させてやろう」

数歩退く紫苑さん。

――願ってもない。地獄に仏…いや鬼――にしては美しすぎる。

悪鬼と変じた魂がゆっくりと立ち上がりました。だがその目に狂気は浮かんでおらず人の――強い憎悪に鈍く光る輝きが戻っていました。


 それを見た紫苑さんは満足そうに言いました。

「仏でも鬼でもない。われら――」


 我ら闇の陰陽師。




「周囲の瘴気を取り込ませるため、この場で祟りを執り行います。相志、『夜窓鬼談 下巻』の準備を」

言われるが早いかテキパキと動き出す相志さんに告げられたのは、初めて聞く名前の本でした。クルリと振り向いて普段の静かな面持ちを私に向ける紫苑さん。

「夜窓鬼談とは明治27年に石川鴻斎という詩文家により記された奇談本。小泉八雲の創作話の原典ともなった――私の愛読書の一つです」

さすが凄いものを読んでいらっしゃる紫苑さんです。私といえば最近の愛読書はもっぱら鬼○の刃です…

 そして祟りの準備は整いました。穢れた神社での祟り――ビジュアル的イメージからすれば王道なのだろうけれど、この祟りは途轍もない事になりそうな気がしています。


 左手に骨鈴を持ち、並べられた蝋燭の輪に近付く紫苑さん。

 左手の骨鈴を軽く振ると、骨同士のぶつかり合うカラカラという寂しげな音が境内に響きます。


 そして紫苑さんが呪文を唱え始めました。


 双盃の左 塵玉の右 天を地と成す 逆撫の社


 唱えながら、左足の草履をたんたんと踏み鳴らす紫苑さん。

右手を胸の前で握り、人差し指と中指を立て、印を結ぶ。

――いつも聞き慣れて居る筈の呪文。見慣れている儀式なのに。この背筋を伝う悪寒は何なのだろう。


 黄幡の御座は地に伏して 歳破の兵主は我が前に集う


 その言葉に応じるように土の中から、瘴気の海を泳ぐかのように『辻神』が集まりだす。周囲の瘴気も私達を中心として、大きくゆっくりと渦を巻いています。


 逢魔が時より出るモノ

 誰そ彼に横たわる形無き理の貌よ来たれ

 絵姿に寄りてここに現れよ

 怨みを糧に踊り出で怪異きを為せ


 円の中に置いた『夜想鬼談 下巻』の頁がパラパラとひとりでにめくれてゆき、やがてピタリと止まった。  


 腰を下ろし休む旅人の背後に鬼が居る。

 大きな顔を嫉妬に狂わせた鬼が居る。

 不意を受けた旅人は思わず返事をしたのだろう。


 その鬼は幽かな存在なのか

 その足から先がするりと消えうせている。

 その鋭い爪で引き裂くことも

 その大きな口で頭から齧ることもできない。

 その代わりに人を――唆す。

 その首を括れ。首を括れと唆す。

 そしてその鬼に憑かれたら最後。

 自らを縊り殺すまで心安く眠れることは無い。


 そんな絵が描かれている。


 紫苑さんは狩衣の袖から針を出し霊体に投げ付けました。

 針は霊を貫通し、赤い糸の後ろに繋がった形代へ霊が吸い込まれ、そのまま『夜想鬼談 下巻』 目掛けて飛んでゆく。


「怪威招来――縊れ鬼!」

その言葉と共に、『夜想鬼談 下巻』 の真上に到着する形代。

 それに呼応するように『辻神』達も囲いの中へ我先にと足を踏み入れてゆく。

 途端、辻神達と瘴気が形代へと渦を巻いて吸い込まれていった。そして全ての辻神が吸い込まれ、境内に満ちる瘴気までも残さず吸い尽くされた時、円を作るように置いていた蝋燭の火が蒼い火柱となって吹き上がった。そしてそれは渦を巻き、巨大な焔の竜巻と化した。


 炎が収まり静けさを取り戻した輪の中へと目を遣ると―― 


 男が立っている。

 仕立ての良い背広を着て、立っている。

 俯いたままで、ただ静かに立っている。

 そしてその首には――

 背広には不釣合いな、目の粗い縄がだらりと垂れている。

 まるで――絞首台から降りてきた男のようだ。

 だが生還した訳では無い。死して尚、戻ってきたのだ。

 その澱んだ眼に明確な意思――紅蓮に燃える復讐の炎を燃やし、戻ってきたのだ。

 相手の首へとその縄を掛けるために。


 そんなモノが。

 いる。


 ――怖い。


 純粋に怖い。まるで“死”が目の前に現われたようだ。

 “死神”を呼んだ時には――やがて誰しも平等に訪れる、静かな“死の気配”。そこには恐ろしさもあるが、静謐さや安らぎを見出す事も出来た。

 だがこの“縊れ鬼”にはそれが無いのだ。あるのは生への羨望と怨み――狂気じみた縊死への執着。そして殺意。

 この俯いた紳士――縊れ鬼からは、そんな気配がバケツで水を掛けられるようにざばざばと浴びせられてくる。

 震えそうになる私の肩に硬い手が置かれた。暖かい――相志さんの手でした。

「…以前『死神』の祟りを執り行った時に、本邦における死神とは人を殺す存在ではなく、“死にたくさせる存在”だった。と説明しましたよね」

どんな祟りにも背を向けず相対してきた。そんな相志さんも、この縊れ鬼は直視に耐えられないのか、私を庇おうとしていたのか、祟りへと背を向けて私の前に立ってくれていました。

「この『縊れ鬼』は“人を首吊りさせようと唆す”妖怪であり、その意味では死神と同義――いや、殺す事だけに関してはそれ以上の存在と、言えるでしょう」

こういう時に相志さんの天上イケメンフェイスには救われます。けれどそのイケメンフェイスも今は額に汗を浮かべ精一杯苦しみに耐えながらも、相手を不安にさせまいと堪えて笑みを浮かべているという――その手のマニアなら沸騰を超えて蒸発してしまいそうな悩ましい顔を私に向けていました。

「あ、ありがとうございます…そういえば相志さんっていつも妖怪の解説をしてくださいますけど――」

気がつけば私は全く関係の無い質問を投げかけていた。少しでも縊れ鬼の殺気から逃れたかったのだ。相志さんも全てを言い切る前に質問の意図を察してくれた様で、

「紫苑様に叩き込まれていますから」

と悶絶ものの笑顔で言いました。

 ――自分からって訳じゃないんだ。


 あああああああああああああああああああああああああああ


 形が整えられ葛葉の祟りと成った『縊れ鬼』が涙を流しています。

 十年経ってようやく怨みを晴らせることが嬉しいのか

 助けられずその手から零れ落ちた人達へ向ける慟哭なのか。

 聞いていて胸が詰まるような雄叫びでした。


 周囲の穢れを祟りとして吸収し尽くし、いまや清浄となった神社を、凶悪な祟り『縊れ鬼』が静かに歩き去っていった。


 紫苑さんはその背中を見送りながら満足そうに言いました。


「祟り――ここに成されたり」

ちょいと長くなりました。

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