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幕間 其の壱

 サン 「また運営からの検閲が入りましたね」

こんぺい「しかも次やったら垢Banすっぞ前科者って脅されたな」

 サン 「直接的な表現は避けたつもりの様でしたがね」

こんぺい「作者は菊池秀行の読み過ぎなんだよ」

 クロ 「こっちは検閲されてないのにゃ。https://estar.jp/novels/25855080」

こんぺい「ここで他サイトの紹介とは図太ぇなクロ…」

 クロ 「どうせ読んでる人も居ないのにこんな仕事だけは頑張ってご苦労様なのにゃ」

こんぺい「しかもサラリと運営に厭味まで」

 サン 「作者さん、どうせここ焼き払うつもりだったみたいだし、いいんじゃないですか?」

こんぺい「まぁここへの掲載は古巣へのケジメみたいなもんだしな」

 クロ 「という訳で、作者のなろう垢は風前の灯火なのにゃ。そのうち引っ越し確定にゃ」

 そして3日後。

 私の隠れ里『3月8日の道』。


 桜の林の中にある、芝生の生える少し開けた場所――羽黒はそんな場所を教えてくれました。せめて建物の中が…と思い聞いてみたのですが『建築物は存在していないので御座います』と言われてしまいました。うん。そのうち建ててもらおう…って建築屋さんとか呼べるのかな。


「御用がありましたらお声掛け下さい。私は姿を消しているので御座います」 

そうして羽黒は私達の前から姿を消しました。うん。そうして貰えるとありがたいです。

 あまりの緊張に朝からギクシャクしている私に反しお露さんはと言いますと、

「見て見て若葉ちゃん!あれから横浜まで行って買ってきたよ!」

女子高生の様にキャイキャイはしゃぐ腕の中には、全長1メートルはあろうかという巨大なカワウソのぬいぐるみが抱かれています。いつも通りというかいつもよりテンション高めのお露さんです。

「いや大きくないですか?八景島まで行った努力は認めますけど」

「大きい方が可愛いっしょ!」

「じゃれて頭の上とかに容赦なく乗ってきますよ?そのサイズが」

「マジか最高なんですけど」

「仕事の邪魔になりません?」

その言葉にほんの少し考える様子を見せましたが、

「デスクワーク中は背負う!これで完璧!」

と、言い切るお露さん。まぁあの大きさにもふもふしたい気持ちは分からなくもない。

「まぁ…多分大きさは式神自身が変えられるので大丈夫とは思いますけど…」

「変えられるんかいっ!」

お露さんはそう言うと、巨大なカワウソのぬいぐるみを入れてきた大きなバッグの中から、手乗りサイズ程の小さなカワウソのぬいぐるみを取り出してきました。

「じゃあこっちのちっこいのにする!こっちの方が造形がいいから!」

「まさかの控え…」


 そして唐突に訪れる気まずい空気――


 それもそうだ。これから二人で、ある程度とはいえ愛し合わなければならないのだから。

 式神の繋がりを持たせる方法。それは『情で繋がった証を以って式神を作る事』なのである。

 私の時は私と紫苑さんの唾液。そして二人の血でした。なので今回も――キスで唾液と血を絡ませ合う――つもりなのです。

 なのですが――


「あ、あの…」

「な、なに若葉ちゃん?」

「歯はちゃんと磨いてきましたから…」

「あ、アタシも歯は磨いたし、ブレスケア10個くらい食べてきたから大丈夫!」

「じゃあ…始めます…ね?」

「アタシ女同士ってのは初めてなんで上手くないと思うけど、ヨ、ヨロシクね」

「じゃあ…始めますね…」

2階同じ事を言ったことすら気付かず、お露さんに歩み寄る私。そっと両腕に触れるとお露さんの身体がビクンと跳ね上がった。やはりお露さんも緊張しているのだろう。それを私に負担をかけさせまいと強気に振舞っていたのか。気を使わせてしまった。

 だがキスをしようとしたところでお露さんの方が背が高いので唇が届かない事に気が付きました。

「あの…届かないので…」

「あ…じ、じゃあ…横に…なろっか?」




 ―― 検閲済 ――




 そして私とお露さんの唾液とかいろんな液と血液で濡れたコツメカワウソのぬいぐるみ。

 これで“繋がりを持つ式神”を作る準備は整ました。


 これで終わり。

 そう思いほっとした――と思ったら、何故か胸の奥がチリチリと軋みました。

 手の届かない心の奥底に詰まっていた物が取れた――そんな感じなのですが、そうしたら今度は詰まり物が取れて空いた隙間が物寂しいような。

 これは喜べばいいのか悲しめばいいのか自分でもよく分からない。分からないから不安になる。

「じゃあいい加減、式神作りに入りますね」

不安になるから気持ちが荒れる。気持ちが荒れるから口調も荒れる。狩衣の乱れを直しながら、ぶっきらぼうに言ってしまった。

 そんな態度を取りたい訳じゃないのに――じゃあどうしたいの?

「あれ?どしたの若葉ちゃん」

お露さんの声が、まるで私の胸に爪を立てるようにチクチクと刺さるんです。空いた隙間にお露さんの声が刺さるんです。それが心地良いのか不快なのか。それがどちらなのかが分からないのです。

「いいからお露さんも服着てくださいっ」

だから苛つく――だからざわめく。私が。私がこんな気持ちなのに。

 お露さんは服も乱したまま能天気に寝転がっている。

「…気持ち良くなかった?」

挙句の果てにそんなに気安く――

「気持ち良かったですっ!すっごく気持ち良かったんです!気持ち良すぎて――」

私は思わず大声で叫んでいました。怒っているのか泣いているのか自分でも分かりませんでした。どんな顔をしていたのかはお露さんも教えてくれませんでした。


 けど――

「そか。なら良かった」

その時のお露さんは満面の笑みを浮かべていました。

「え…」

どうしてそんな風に笑えるのだろう。どうしてそんな顔を向けてくれるのだろう。

 アレは過程として必要であっただけの行為なのに。

 そこに何かを求めるという事など在り得ない筈なのに。 

「私もさ、若葉ちゃんに何があったのかは知ってるよ」

言葉が出て来なかった。何も言えなかった。何と言っていいのか、未熟な私には分からなかった。けれど――

「だからさ。こういう気持ち良いコトを私とするのなら、嫌だと思うより楽しんで欲しかったの。気持ち良い事って悪い事じゃないって思って欲しかったの」

それって――

「私、若葉ちゃんの事、大好きだよ?」

そう言ってとびきりの笑顔を見せてくれるお露さん。


 分かったような分からないような。そんな感じですが。

 ――赦された。

 そんな感じがしました。

 そして。 

 私ってまだまだ子供なんだなと思い知らされました。


「ありがとう…ございます…私も――」

「けどまさかあそこまで一緒に盛り上がっちゃうとはアタシも思わなかったけどね」

「きゃあぁぁぁぁぁ」



 さぁ、気を取り直してお露さんの守護を目的とした式神の作成です。


「じゃあ『歳神』を呼びますね」

右手の人差し指と中指を立てる刀印を結び、私は呪文を唱えました。


 日の出と共に来るもの。

 頭を垂れる稲穂を運ぶ形無き理の貌よ。汝らと契りを求める魂の下へ集え。


 呪文唱えてる途中で歳神がもう来てた…というかすっごい元気な歳神です。お露さんの方を向きすっごい飛び跳ねています。足音の鈴の音がひっきりなしにチリチリンと鳴っています。

「元気な子が来ましたね」

「活きがいいね!」

「鮮魚ですか」

現われた歳神はお露さんのほうを向いてぴょんぴょん飛び跳ねて“喜び”を全身で表現しているように見えます。 

「ぬいぐるみはあくまで姿形の補助です。ちゃんと“現物”をイメージすれば本物と変わらない姿で現れるみたいなので」

「まーかせて!飽きるほど動画見てるから!」

笑顔で親指を立てるお露さん。私はそれを見て再び呪文の詠唱に入りました。


「歳神よ、我が禄を食め。慈愛を糧に踊り出で奇跡きを為せ」

歳神から作る式神は強力なので、一般的な陰陽師の巫力では保てない。

「我が友に依り従いて護法と成れ!」

だから私があくまで雇い主。私の命令でお露さんの指揮下に入る、という事になる。

「我が名は…露草!」

お露さんが名前を言うと、一際元気な歳神がカワウソのぬいぐるみに飛び込みました。

「露草の名の下に守護し奉れ!穢れを退け禍を祓え!」

掌に乗せたカワウソのぬいぐるみから、薄い青を纏う光が突き抜け辺りを照らし――


 ぷぅ――――!


 お露さんの掌で小さな獣の姿をした式神が大きくジャンプ跳ね上がりました。

「キタ――――!!」

希望通りコツメカワウソの姿をした式神です。大きさはぬいぐるみとほぼ同じ。お露さんのイメージがそうさせたのか、ほんの少し手足が短いような気がします。それはそれで可愛いんですけど。

「名前をつけてあげて下さい。それで儀式は終了です」

お露さんの掌から肩へと移り、首の周りをグルグルと回るカワウソ姿の式神くん。

「…おいで?」

お露さんが手の上に移るよう声をかけると素直に従うカワウソの式神くん。

掌に乗り、主人となったお露さんの顔をキラキラとした瞳で見つめる産まれたばかりの式神くん。尻尾をパタパタと勢い良く振っています。

「それじゃあキミの名前は…」

そして溜めるお露さん。それを待ちわびるコツメカワウソの式神くん。


「獣王黒風丸!」

ニコニコ笑顔で応えるお露さん。しかしそれとは反対にコツメカワウソの式神は顔を顰めて一歩後ずさっていました。

「お露さん、式神くんがドン引いてます」

「むむ…じゃあインフィニットジャスティス!」

「色々ツッコみたいですけど呼び難くありませんか?」

式神くんも首を振って拒否しています。

「たんじろう!」

「集英社の方から刺客が来ます」

さらに“イヤイヤイヤ”と前足を左右に振る式神くん。その様子を見ては思い切り溜息を吐くお露さん。

「コレはと思って準備してた名前、悉く拒否られてるんだけど…」

「ネタじゃなかったんですか…」

あからさまに肩を落としている所を見ると、本気だったのだろう…名前の決まらないコツメカワウソの式神くんもお露さんの頭の上でしょぼんとしています。


「じゃあ――あまいろ、なんていかがですか?」

「あまいろ?」

「ぷ?」

二人揃って顔を傾げて私を見るお露さんと式神くん。キミの泣き声はぷー、なのか。

「はい、天の色と書いてあまいろ、です。色の和風な呼び方で、露草色の隣の青がコレだったので、常にお露さんの隣に居る。という意味で…」

私がそう言うと、お露さんの頭の上でコツメカワウソの式神くんがジャンプして声を上げました。

「ぷっぷ――――!」

「キミはそれがいいのね?」

「ぷっ!」

前足を挙げて返事をしている。

「じゃあ…キミの名前は天色(あまいろ)だ!」

「ぷ――!」

お露さんがそう言うと、一際高く跳ね上がる天色くん。そしてクルクルと螺旋を描きながら降りてきてはお露さんの胸に着地しました――というかこの子、空飛んだ?

 そしてお露さんの胸に座ってお顔ペロペロしている天色くん。小さな尻尾を激しく振って喜んでいるけど…お乳がペシペシ叩かれているように見えるのは気のせいだろうか。

「ちょっ、この子地味に尻尾ペシペシが痛い。お乳が痛い」

「贅沢なこと言わないでください。じゃあそろそろ帰りましょうか」

「はーい、パイパイ痛いからもうちょっと大人しくしよっか?」

お露さんがそう言うと尻尾の振りを控え、今度はお露さんの首の周りをクルクルと歩き回る天色くん。可愛ぇな。

「胸を降りろとは言わないんですか」

「夢だったのよぉ。ペットを胸に乗せて歩くの」

「小型犬くらい乗れそうですけどね」

「いやさすがにアレは重かった」

「乗せたんですか」

「というか本人からしたらデカいのって邪魔だし重いし面倒なだけだかんね?」

「破壊兵器くっつけて歩いてんだから当たり前です。それ位苦労して下さい」

「ふーん…」

なにやら思う所のある顔を見せるお露さんを置いて歩き出した時でした。お露さんが後ろから私に抱きついて



  ―― 検閲済 ――



「やっ…もう…本当に…」

「…嫌なら止めてもいいんじゃよ?」

そう言って手を止め、必死に腕に縋る私の耳元で呟くお露さん――そういうタチの人だったんですか。


 顔から火が出そうです。


「――あんまり虐めないで下さい…」






若葉 「詳しく話するとまた問題が起きるのでコレ位で勘弁してください」

お露 「誰に話すの?」

若葉 「…読者さんに」

お露 「アタシは公開したほうがイケると思うんだけど、問題って?」

若葉 「18禁指定ですってば。前作で一度酷い目に遭ってるんです」

お露 「じゃあ濡れ場の続きはエブリスタで!」

若葉 「書かせませんっ。あと濡れ場って生々しいんで止めてください」

お露 「えー、じゃあ私達の愛の営みはどうなるの?」

若葉 「そこは読者さんが勝手に妄想してくれます。その方が捗ります」




 そして後日――



 大変でしたと溢す私にこんぺいさんが言いました。

「あれって、互いの血と唾液を混合して式を作るだけでいいんだぜ?」

「えっ」

「姐さんに言われなかったか?」

「私は『情で繋がった証を以って』って…それだけで良かったのぉ?!」

「あぁ。それだけでいいんだぜ?若葉ちゃんだって男同士の絡み合いなんて…でも需要はあるのか」

「マジですかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「…どこまでヤッてきたんだ?若葉ちゃん?相志が狩衣を洗濯してたが、顔真っ赤にしてたぜ?」

「きゃああああぁぁぁ!」

「…どれどれサンの記憶でも確認してみるか」

「破棄!消去!隠滅!破壊!消滅!隠匿ぅぅぅうぅぅデストロイぃぃぃ!」



クロ「…とっくにライブ映像でひゃっほいしてた事は言わない方が良さそうにゃー」

次なるお話は『縊れ鬼』

汚職の罪を被せられた男の十年に渡る怨みが起こす祟り――ご期待下さい。

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