オープニング小話
私が『タタリアン』で働く様になって、およそ一年が経ちました。
いろいろあったけど、私は元気…って何処かで聞いた言葉ですね。
みなさんはお元気でしたか?葛葉流陰陽師、見習い…は無事に卒業となりましたが、まだまだ半人前の陰陽師だと自覚しております、飯綱若葉です。
あの『百鬼夜行事変』以降何ヶ月もの間、『タタリアン』に祟りの依頼に来るお客様はパッタリと途絶えていました。
あまりの平和さに紫苑さんも夕方頃には下へ降りてくる機会が増え(と言ってもカフェの仕事をする訳ではありませんが)たまたま紫苑さんを見かけた男性客が顔を蕩けさせ、同伴の彼女さんにタイキックを食らう羽目になったり、私も紫苑さんと普通のお話をする機会が増えました。
これはそんな時のお話です――
「紫苑さん、そういえば気になっていたんですけど…」
「なんです?若葉さん」
「あの『百鬼夜行』以来、祟りの依頼が来ないと思いませんか?」
私が質問すると、紫苑さんは少し考え込んで「あくまで推測ですが」と言って解説してくれた。
「この小夜鳴市周辺から一切の禍が祓い流されたからではないでしょうか」
「禍…?」
「えぇ。澱み固まる前の『辻神』の元、とでも言えば理解し易いでしょうか」
更に紫苑さんは、禍というのは神道系でいうところの不吉、縁起の悪い、おそろしいモノの総称だと教えてくれた。『辻神』の素となる“気脈”の澱みや人々の営みで放たれるマイナス思考の念など…なのだそうです。私はウンウン、と頷きながら紫苑さんの話を聞きました。
「しかもこの“禍”は、より濃い不幸の塊に収束してゆく特性を持っています。この小夜鳴市に巨大な禍、『百鬼夜行』が現れ、周囲の禍を寄せ尽くした。そこへ『宝船』が現れて全てを水に流した…からではないでしょうか」
「じゃあ…」
私は口を開こうとしたが、言おうとした事を分かっていたのか、遮るように紫苑さんが首を振った。
「でも人の営みがある限りケガレは溜まります。いえ――むしろ浄化された分、窪地に水が流れ込むが如く周囲からのケガレが大量に流れ込み、うねり――以前より混沌とするのでは…と思います」
…それって前より酷くなるって事ですか。
「じゃあ…」
すると今度は首を縦に振る紫苑さん。と言うか意外と饒舌なんですよね、紫苑さんって。お友達トークとか始めたら朝までお喋りしてそう。というか私、『じゃあ』しか言ってない…
「それがどのような形で顕れるのか。想像は付きませんが」
そこまで言うと紫苑さんはほんの少しだけ上を向き、
「――忙しくなるのでしょうねぇ」
と微笑んでいた。
――――――――――
サン「とうとう始まるみたいですね、『夕闇カフェの陰陽師Ⅱ』が」
クロ「なんでⅡなのかにゃ。作者の趣味なら“Z”になるはずなのにゃ」
こんぺい「そうすると俺達ぁ変形とかさせられるハメになるぜ」
クロ「それはいいにゃー。“うえいぶにゃいだー”になってお空とぶのにゃ」
サン「クロは前向きですね」
こんぺい「まぁ俺達『式神』は変身できるしな」
クロ「どうせ変身するなら仮面にゃいだーになりたいにゃー」
こんぺい「ま、まぁとにかくだ。今回は1本目のような全体を通しての所謂“メインストーリー”ってのは作らないつもりだったらしいんだが…」
サン「まさか…やるんですか?」
こんぺい「あぁ…しかも旧い支配者がどうとか――」
クロ「ぜろにゃん!ぜろにゃん!」
サン・こんぺい「……(変身できると思ってるのかな?)」
サン「ま、まぁ…作者さんが勢いで書き上げた小話なので実現するかも分かりませんし…ね、ねぇ?こんぺいさん?」
こんぺい「いや、けっこうやる気らしいぜ?」
サン「ええぇぇ!?」
こんぺい「ま、相変わらず筆は遅ぇからな。面倒だって無かったことにする可能性はあらぁな」
サン「落とす所はちゃんと落とすんですね…という訳で、
『夕闇カフェの陰陽師Ⅱ』ようやく開店いたします!」
こんぺい「ちなみにクロよぉ…仮面ライダーはもうとっくにセイバーに変わったぜ?」
クロ「に゛ゃあぁぁぁっ?!」