6.ぐるぐるぐるぐる。
フェガリ達が暮らすのはズヴェズダ大陸にあるシャムス王国。そこは魔王城の遙か南にあった。
騎士隊に魔法を使える者はいなかった。いや、正確に言うといないわけではないのだが、その魔法は攻撃魔法ばかりだった。
その為転移魔法で一足跳びに自国へ帰る事も出来ず、海路と陸路を辿って帰るしかなかった。
馬車に乗り、がたがたと揺れる道を進んでいく。ティエラは生まれてこの方国から出たことは無いはずだ。
故に慣れない長旅に体調を崩しはしないだろうかと、フェガリはずっとティエラの事を気にかけていた。
「姫様、ご気分は如何でしょうか」
「……大丈夫よ」
「左様でございますか。何かありましたら遠慮なくお申し付けください」
「……ねぇ、フェガリ」
「はい?」
「……何で助けに来てくれたの?」
ぽつりと問われ、フェガリは目を丸くする。
「何故、とは……」
フェガリは騎士隊長である。ならば姫を守るのは当然のことだ。更にはフェガリ自身ティエラに好意を抱いている。助けに行くことは当然、吝かではない。
「……許嫁だから仕方なく来たんでしょ?」
「…………」
ティエラの言葉にフェガリは息を飲んだ。決してそんなつもりでティエラを助けに行ったわけではない。例え許嫁でなくとも、自身が騎士隊長でなかったとしても向かっていたはずだ。
それと同時にフェガリは気付く。自分の想いはティエラに届いていないのだと。でなければそんな質問するはずがない。
フェガリは目を伏せ、言った。
「……ええ。許嫁ですから」
「そう……」
フェガリは気付かなかった。フェガリの言葉を聞いたティエラがひどく悲しげな顔をしていたことに。