3.とつぜんとつぜん。
それはある日の事だった。ティエラとフェガリが国王と王妃の元に呼び出されたのだ。
玉座に座る国王。その隣には王妃。呼び出されたティエラとフェガリはその前で不思議そうな顔をしていた。
国王がそんな二人に向けて、言った。
「フェガリ、ティエラ。お前達を呼び出したのは他でもない、お前達を結婚させようと思う」
「は?」
「え?」
あまりに予想外な国王の発言に、二人は妙な声を上げた。
ちなみに喧嘩腰気味に「は?」と言ったのがティエラである。国王とはいえ実の父相手であるが故にそこに遠慮は無かった。
「いや、何言ってんの父様」
「お前ももうそろそろ伴侶を見つけていい歳だ。だがお前の事だから本に夢中で現実の男には興味が無いのだろう」
「それは違うわ父様。私だってちゃんと現実の人間に興味はあるわ」
「ほう?」
「そう、この本に出て来る王子様のように背が高くてイケメンで礼儀正しく頭が良く優しく強いイケメンなら」
「そんなのはおらん。おっても多分腹黒い。というか何でイケメン二回出たんだ」
「顔は譲れないわよねぇ」
「后は黙っておいてくれるか……」
「あら、そんな私が選んだんだから、もっと誇っていいのよ?あ・な・た」
「う、うむ、そうか……」
「帰っていい?」
「いかんいかん。えー、と、まぁそういうわけでだ。フェガリ。娘を娶ってやってくれぬか。騎士隊長ならば強さも賢さもそれなりにあるだろう。背も他の者よりは高いし礼儀正しいのは当然だ。顔も決して悪くない」
「それにティエラちゃんに付き合ってあげてる辺り、優しいわよね」
「と、いうわけだ」
ぱたぱたと外堀を埋めてくる国王と王妃。ティエラは心底嫌そうな顔をした。
「そんな顔をするな。……フェガリはどうだ」
「はっ。……私めでよろしければ、このお話謹んでお受け致します」
「何で?」
ティエラが言った。散々冷たく当たっているというのに何でそれで結婚を了承するのかと、本気でわからない様子だった。
「フェガリもこう言っているし、な?」
「嫌よ。何で結婚なんてしないといけないの」
「儂らもそろそろ孫の顔が見たいというか」
「それにティエラちゃんの花嫁姿も見たいわ」
「…………」
「と、そういうわけだ。何も今すぐというわけではない。まずは許嫁としてもう少し親交を深め……ってティエラ!?」
国王の言葉が終わる前にティエラは部屋を出て行こうとしていた。
「嫌なものは嫌」
振り向き様に吐き捨てるように言って、ティエラは部屋を出て行った。
「……すまんなぁ、フェガリ」
「いえ。突然のお話でありますし、姫様にも寝耳に水であったのでしょう。もう少し時間を置けば……」
「そうかね。何はともあれ、フェガリが断らんでくれて助かった。……娘を頼むぞ」
「はっ」
頭を下げるフェガリに、国王も王妃もどこか安心したようだった。