表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疾走者の不変世界(リフレインソング)  作者: 絵之色
第三章 暗闇に潜む影
78/352

75.状況説明 

 俺はエファンさんと一緒に車に乗り込んでから、青鳥ビルにやって来た。

 トラックは先に来ていて、担架に運ばれたはずのリアナさんは引っ越し屋の段ボール、というより何か特殊そうな棺桶のようにも見える箱で男性の救護員の人たちに運ばれている。

 俺は、じんわりと肌にへばりつく恐怖感を感じていた。 


「大丈夫です、シュネル様。シルバー様を治療しましたので」


 エファンさんは落ち着いた表情で声をかけてくれた。

 彼女の言葉に俺は疑問を抱く。


「え? じゃ、じゃあどうしてここに……?」

「それに関しては、中に入ってからがよろしいかと。構いませんか?」

「……わかりました」


 エファンさんの問いに俺は従うと、青鳥ビルへと入る。

 気高いエファンさんの流れる金髪が、やけに輝いて見える気がする。

 それはおそらく彼女の能力で現れた王冠の色と、よく似ている気がしたからかもしれない。


「シュネル様、少し受付に行かなくてはいけないので待っていてくださりますか?」

「は、はい」

「大丈夫ですよ、シルバー様は強い人ですから」

「……エファンさん」


 エファンさんは天使にも等しい微笑を浮かべる。

 不安を取り除こうとしてくれる彼女に俺は笑い返した。

 彼女は頷くと受付の方へと歩き出す。

 エファンさんたちの会話よりも、俺はとりあえず息を吐いて自分の気持ちを落ち着かせるように試みる。数度、胸元に手を当ててゆっくりと深呼吸をした。

 俺が目を閉じて思いっきり息を吐く。


「……よし」


 俺は目を開いて、ゆっくりと頭を冷却させる。

 とにかく、シルバーさんをエファンさんが処置してくれたってことは治療してくれたってことだから前向きに考えていいだろう。

 とにかく俺は、慌てないで落ち着くこと。

 変に感情的になって暴走する方がいけないことだ。

 とにかく、エファンさんが来て病室に行くまで落ち着いていないと。


「シュネル様、お待たせしました」

「あ、エファンさん」 


 俺は顔を上げると、エファンさんがやってくる。

 彼女は受付の人とやりとりをし終えたようだ。


「シュネル様、クリフ様に会っていただけますか」

「クリフさんに?」

「はい、シルバー様に会うのはその後でよろしいですか?」

「わかりました」


 俺とエファンさんはエレベーターへと入る。



 ◇ ◇ ◇



「それで、話を聞かせてもらってもいいかな」

「は、はい」


 俺は今、説明室にてクリフさんと対面する形で席に座っている。

 エファンさんとはエレベーターを乗った後、別れた。

 俺は緊張しながらも、目でしかと見た状況をクリフさんに説明する。


「まず、シルバーさんが首筋を赤コートの男に噛まれていて……俺が駆けつけた時には、シルバーさんを建物の壁に突き飛ばして、跳躍して他の建物の屋上の方に逃げていきました」

「……赤コートの男か」


 クリフさんは眼鏡のブリッジを整える。

 真剣な面持ちのクリフさんに俺は続けて口にする。 


「はい、確か手とか褐色肌だったから黒人系だと思ったんですけど」

「……アギレラか」

「アギレラ?」

「ああ、ある組織の男でね、殺戮の狂犬とも呼ばれている恐ろしい男だよ」

「さ、殺戮の狂犬……」


 なんとまあ、中二病マックスな通り名だ。

 い、いやいやでもどうしてその人がリアナさんを襲ったんだ?

 もしかして知覚者じゃない一般人、なわけないよな。


「……ある組織って?」

落日(らくじつ)無冠(むかん)、という私たちの同じ知覚者の組織の一つだよ」

「え!? 青鳥(せいちょう)が知覚者の組織なんじゃないんですか!?」

「ああ、知覚者のグループはいくつかに分かれている。知覚者だって人間なんだ。多少のグループがあるのはおかしいことじゃないだろう?」

「そ、それはそうかもしれないですけど……」

「しかし、違ったか。それを聞けただけでもありがたいよ」

「え? 違った?」


 クリフさんは眼鏡の智に軽く触れる。

 俺の問いに落ち着いた口調でクリフさんは答える。

 

「……最近、ドイツ近辺の知覚者が襲われていてね。ナイフを持った血塗れの男に襲われる、と聞いている」

「え!? 血塗れ!?」


 クリフさんの説明を聞いただけで、ひゅっと声が出そうになった。

 な、なんか怖い。ホラーの香りがする……!!


「ああ。だからソイツの名称は、今の所ヴァンピーアと呼んでいるよ」

「な、なんか、吸血鬼みたいな名前ですね」

「そのままだよ、ドイツ語かどうかの違いなだけだからね」

「え? ドイツ語? ラテン語じゃないんですか?」

「ドイツで現れた人物なんだから、特定しやすい言葉の方が都合がいいんだよ。ラテン語は青鳥では基本的に共通用語、という意味合いが強いからね」

「あ、そうなんですか……ちなみに、リアナさんは今回は任務だったんですか?」

「ああ、そうだよ」

「そう、ですか……」


 じゃあ、リアナさんがアーテルの格好していたのも納得だな。


「それじゃ、そろそろシルバーに面会するかい?」

「いいんですか?」

「構わないよ」


 返事をするクリフさんに俺は慌てて席を立った。

 忘れずに会釈すると、クリフさんはにっこりと笑う。


「す、すみません! ありがとうございました!」

「こちらこそ、ありがとう。エファンにはこの階のエレベーター付近で待機してもらっているから、彼女に場所を聞いてもらってもいいかな?」

「はい」

「私も後からシルバーの所に行くから、先に行っていてくれるかい?」

「はい! わかりました!」


 俺はリアナさんの容体が心配で慌てて席から立ち、扉を開けて飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ