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疾走者の不変世界(リフレインソング)  作者: 絵之色
第一章 君に囚われた心
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02.ドイツで初めての買い物

 町並みは目に優しくて、とても暖かい印象を抱く風景が続いている。

 基本的に橙色の屋根や建物の壁が白く目に優しい。

 太陽の日の光が当たるととっても綺麗に見える町だ。斜めに入った線がある建物が多くて、三階建てや四階建ての建物が多い。

 石細工ででできた歩道が続いていて、人で賑わっている。

 道を歩けば歩くほど澄んだ空気は風となって俺の頬を撫でた。

 父さんに宣言されてから色々調べたけど……なんか、気分的にゲームの世界に着た気分味わえる感覚を覚える。


「父さんの前では言わないでおくのが吉だな」


 写真やネットで見るよりも実際に来れたほうがずっと見ごたえがある。

 翔太は鼻歌をする気持ちで、足取り軽くドイツの町の中をゆっくりと歩いていく。

 夜遅くになってしまう前に買い物を済ませなくてはいけないがこういう場所に初めてこれたんだ、うかれてもしょうがない。

 あ、でもちゃんと買い物はしておかないと。父さんに怒られるよな。

 そう思っていると、道端でオレンジ色の屋根が特徴な屋台がやっている。ドイツ語で何か書かれてあるけどちょっとわからない。


「うーん、どうするか……」

 

 はっきり言って、同性の店員さんなら声かけやすかったけど目の前にいる屋台の店員さんはいいお年の女性だ。翔太よ、ここは勇気を出して聞くべきではないかな? と、俺の心の中の父さんが喉を鳴らしながら笑ってくるのが容易に想像できた。


「……よし」


 なけなしのコミュ力を光らせようと、女性店員さんに声をかけようと試みる。


「あ、あの……」

「Was ist los?」

「えー……えーっと? わ、ワンモアプリーズ?」

「? was willst du?」

「え、えーっと……!?」


 しまった、この人は英語通じないタイプ!?

 あ、そうだ父さんからもらったメモを見ればいいじゃないか!


 「って、読み仮名書いてないじゃん父さんのバカぁああああ!!」


 翔太は父からもらったメモ紙を確認すると、そこにはドイツ語の文が乗っているが、読み仮名が何も書かれてなかった。

 このままもう一度家に戻るのもいいだろうが、勝手に去るのもこの人からしたら、不審に思われるだろうし……!! 店員さんが不思議な顔をしているのに気づき、「すみません」と一度頭を下げてから翔太は悶えていた。

 どうしよう、どうしよう……っ、店員さんにまで引かれたらっ。


『――たず』

「……っ」


 学生時代のいじめっこたちの笑い声が脳内で聞こえ始めて口元を抑えた。


「あの……大丈夫ですか?」

「え?」


 翔太は声をかけてきた人物の方へと視線を向ける。

 露出の少ないシンプルなデザインのヴィクトリアンメイド、とも呼ばれる出で立ちの彼女には驚きを隠せない。海外を舞台にした物やファンタジー物の作品などで見てきた本物のメイドが目の前にいるというトキメキ……いや衝撃。

 オタクなら美人とメイドという組み合わせを嫌いなことはほとんどないだろう。

 ホワイトブリムつけた整えられたブロンドの髪がふわりと風に舞う。

 彼女は両手を後ろに組んで俺の顔を覗き込む。アンティークの人形を彷彿とさせる美顔に映える青空スカイブルーの瞳が柔らかく細め微笑んだ。

 日本語で話しかけて来てくれた彼女に少しの間を置いてから尋ねることにした。


「あ、あの貴方は……?」

「しがないドイツ人です。少しだけ日本語がわかるので、何かお困りですか?」


 て、天使だこの人! 聖画から飛び出してきた天使が俺の目の前で降臨なされている……!! 心の中で感涙する中、メイドさんが不思議そうな顔をするのにはっとした。彼女に引かれないよう興奮を抑えつつ、頭の後ろを掻く。


「え、っと……あ、あの俺ドイツに来たばかりでドイツ語がわからなくて……ブルストと黒ビールがほしいんですけど」

「でしたら案内しましょうか?」

「え!? 本当ですか!? お願いします!」

「じゃあ、先に店員さんに事情を説明しますので、少し待ってください」

「は、はい!」


 メイドさんが店員に説明を終えてからアーテムシュタットの町を二人で歩くことになり、一緒に歩道を歩きながら彼女に質問される。

 

「買いたいのはブルストと黒ビール、でしたよね?」

「は、はい」

「お金はユーロ、ですよね」

「はい、でも使い方とか、ネットで少しは調べたんですけど」

「では、スーパーの中で説明しますねっ」


 世界大震災があってから色々と街並みの復興はされているとはいえ、湧界者が他国用の店などがあったから不思議な物が出回っているという噂自体はSNSにもあった。

 その点もアメリカに興味があったのも事実だけど……宇宙人とか、アメコミのヒーローとかでカッコいいとか思ったキャラとかいたしなぁ。

 女性は顎に手を当てて、うーんと口にしながらパンと両手で鳴らした。


「そうですね、ドイツではレーヴェというスーパーマーケットが多いですが、その店でも問題ないですか?」

「はい、お願いします!」

「でしたら、こっちですね」


 俺はメイドさんに道を案内されながら歩く。

 結構、都市の中心街近くに歩いているのか、人がだんだん多くなっている気がする。メイドさんは立ち止まり、俺の方へと手で店を示した。


「ここがレーベです」

「わぁー……ここが」

「はい」

 

 REWEと赤い文字で大きくある看板を見て、ここがそのスーパーだとわかる。

 メイドさんに案内される中、カートのデカさがホームセンターのカート並みにあったのは意外だった。店に入る前にカートを捕まえて、玄関を通る。


「すみません、案内しながら一緒に買い物をしてもいいですか?」

「あ、はい。もちろん」

「ありがとうございますっ」


 二人でお互いの必要な今日の晩御飯の材料を探すこととなった。

 ず俺はブルストを購入するために、俺が晩食用に五本、父さんは晩食用に四本で晩酌用のつまみとして二本ほど購入することにした。メイドさんは野菜やアップルパイを作るのに林檎をたくさんカートに入れている。

 女性と一緒に初めて買い物するのは初めてだ……ちょっと、緊張してしまう。


「あ!」

「おっと、」


 メイドさんがカートに入れようとした林檎を落としたので、林檎を片手ですっと掴む。

 床に落ちてしまっていたら弁償とかになっていただろう。


「すみません! ありがとうございますっ」

「いえ、林檎、落ちなくてよかったです」


 美女の満面の笑みはオタクにとってクリーンヒットレベルの攻撃だ。

 ……ぐっ、て、照れてしまう。

 学生時代、女子と会話したことは部活関連や必要事項といじめ意外にあまり経験がないからこんなにも好意に満ちた笑顔を向けられたら、ニート生活をしたオタクじゃなくても惚れてしまうだろう。優しい美人に弱いのがオタクだもの。

 それをあからさまに雰囲気に出すのはメイドさんに失礼なので、というか童貞って罵られる恐怖が勝って下手なことが言えなくなる。


「じゃあ次は黒ビールですね」

「は、はい」


 メイドさんは気にした様子なく普通に声をかけてくれるのに安堵しつつドリンクコーナーへと足を進めた。


「おすすめの黒ビールは……」

「あの、メイドさん」

「なんですか?」


ドリンクコーナーの扉の前で俺はおずおずとメイドさんに聞く。

 ビールの国、ドイツだからこそ知らなくてはならない。


「ドイツはお酒って辛かったりするんですか?」

「そうですね、日本のお酒と比べると甘い物が多いです。苦味のせいでビールは苦手、という人でも親しみやすいと思いますよ」

「おー!」

「ちなみにドイツビールはキンキンに冷やすより、8℃前後が飲み頃ですっ」

「べ、勉強になります!」


 日本のビールより甘いのかぁ、飲んだことないからわかんないけど。

 父さんだったら辛口派だから辛そうなのをメイドさんに尋ねながら選んで、会計へと向かった。会計の机がベルトコンベア式で思わず目を見開いて驚く。仕切りの棒で前と後ろを分けているのだとか。

 メイドさんが言うにはドイツでは普通なことだそうで、ドイツならではなんだなと感心した。店員さんにハローと言われたので挨拶をし返すとにこやかに笑ってくれたのにちょっと嬉しくなる。

 その様子を見ていたメイドさんは人差し指を立てて説明してくれた。


「ちなみに会計は後ろの人の購入数が明らかに少ないときは順番を譲ることがある、という文化があったりするんですよ」

「え? 優しい……」

「あはは、でも全員が必ずってわけでもないのでそこまで気にすぎないでくださいねっ」


 両拳を軽く上げてニコッと笑うメイドさん、可愛い。

 ……うっ、優しい。海外初心者人間にはその気遣いは刺さるっ。

 ちょっと脳内でオタク喋りになりつつある脳がときめきで震える中、一瞬胸元を抑えるのにメイドさんから不思議がられながらもメイドさんのおかげでスムーズにブルストと黒ビールを購入できた。袋とかは用意されないらしく紙袋をメイドさんが持って来ていた物を一つもらってお互いの荷物を胸に抱いて店を出た。


「ありがとうございました、メイドさん!」

「いえいえ、せっかくのドイツを楽しんでもらえないのは損ですので。では失礼しますっ」


 メイドさんはお淑やかに笑って、ドイツの街中に溶け込んでいった。

 俺は気遣ってくれた優しいドイツ人の彼女に深く感謝しながら、俺は家へと帰ることにした。

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