236.赤コートの男 レイビース
翔太とリアナはキティナを撒いて、体育館の中へと踏み入る。
「……誰もほかの生徒はいないですね」
「そのようね……」
生徒たちは見当たらない、さっきの騒動でみんな逃げたんだろうか。
「――――青年!!」
「え!? うわっ!!」
リアナさんが俺を押し倒してきて、油断していた俺は体育館の床に転がる。
それと同時に後ろから床が壊れる大きな音がした。
「り、リアナさん!?」
彼女はすぐに俺を手で庇うように後ろを見やる。
俺はすぐに後ろを見て、キティナが持っていた巨大なハンマーがさらに巨大化した物がステージを潰していた。
そこには、さっきまで聞こえてなかったヒールの音が聞こえてくるではないか。
「ちぇー、避けられちったぁ。相変わらず索敵もいけるガンナーとか、ゲームでも強キャラだけっすよぉ? シルバー先輩♡」
「…………キティナ」
コツコツと、足音を鳴らせながらキティナは後ろに両腕を組みながら現れた。
猫の目にも似たその瞳はまるで獰猛な肉食獣の目に映る。
こて、っと飄飄とした口調で彼女は手を挙げた。
「お久しぶりっス! あ、でも今はリアナたんって呼んでも問題ないよねぇ! だって、敵同士ですし?」
「……貴方に名前を呼ばれる筋合いはないわ」
「えー? で、なんでそこのザァコに名前呼ばせてるんですかぁ? ……まさか、恋人とか? リアナって呼ばせてるなんて、前のセンパイなら想像できないなぁー」
「……教える必要ある?」
「あっは、あの真面目ちゃんのセンパイには想像もできませんけどぉ、処女あげたんです?」
蕩けた笑みをリアナさんに向けるキティナに翔太は違和感を覚える。
な、なんだ? この、キティナって子リアナさんの知り合いなのか!?
先輩って、まるで青鳥に所属していたみたいな言い回しだし……!
「青年、貴方は今すぐ逃げて」
「え? で、でも、」
「いいからはやく!」
翔太はリアナの指示を聞いて、彼女の意見を尊重することにした。
「わ、わかりました!」
「――――――話、無視してんじゃねえよ。そっちがその気なら、アタシにだって考えあんだよ」
「……彼には手を出させないわよ、キティナ」
「あっは、いい先輩ぶって、ウザァーイ! で・も……そういうところ、大好きだから――――ブッ壊したくなるじゃないですかぁ♡」
キティナは翔太のもとへと走り出す。
銃を発砲するリアナの攻撃を猫のようにひょいひょいとかわしていくキティナを見て、翔太へとむけて叫んだ。
「! 青年!!」
「――――え?」
「あはは、逃がすわけないじゃん!!」
「っ――――!!」
キティナはヒールの仕込みナイフで俺の背中を刺そうとする。
俺は瞬時に俺は振り返って、キティの攻撃を腕で受けた。
「うわぁ、ザコ! ザコの中のザコ! 弱いねえ、君ぃ!!」
「っく……!!」
俺は腕を抑えながら、キティナを睨みつける。
どうする? リアナさんはここで彼女と戦闘するのは問題ないはず。
むしろ俺の存在を知られないためにも、下手な行動はとれないんだからこのまま逃げるのが、筋だ。でも、本当にいいのか? リアナさんが、好きな人がケガするような目にあうのわかってて、放っておけるのか?
でも、ブークリエさんも近くにいるなら、応援を呼びに行けば……!!
キティナは漆黒の大鎌を構えながら、翔太へと振り落とす。
「ざぁーこくん! 大人しく――――――死んでね!!」
「――――!!」
まずい、今能力を使ってスピードをあげるわけにはいかない。
俺は思わず足を止めて目を閉じて身構える。
避けきれな――――、
キィイイイイン!! と金属音が聞こえてくる。
「――――――ザコはお前だろ、クソガキ」
赤いコートの男が、俺の目の前に立っている。
聞き覚えのある声と俺よりも数十センチも高い背中は、リアナさんが襲われたあの時のことを思い出す。
「――――――レイビーズ!?」




