231.囚人 アストリア・アルブレイド
「はやく行かないと……!!」
俺はクリス少年の無事だと予想し、ネコミミヘッドフォン少女に気づかれないよう、その場を後にした。俺は走りながら、耳に付けてある通信機を起動させる。
「シルバーさん! 破戒の囚人院の囚人たちが、学園に集まってます!」
『本当? 青年』
「はい! クリフさんに教えてもらった特徴があるので間違いないかと……!」
『……厄介ね、他の生徒たちに危害が行かないように対処はした?』
「もう既に生徒の一人が殺されてます!!」
『……面倒なことをしてくれたわね、あそこの囚人たちは』
リアナさんが苦虫を噛み潰した表情が余裕で想像できた。
「どうしますか? クリフさんの指示を仰いだ方が―――っ!?」
俺は背後から感じた殺気に振り返ると、細身の女が鋭い目つきでナイフで切りかかって来た。
慌てて俺は腕で身を庇う。
「っ!!」
「っは、っはぁ! よく庇ったなぁ」
痛みが腕に走って、血が腕から滴り落ちるのを感じながら目の前の人物を睨む。
男勝りな口調の女は笑い声をあげながら後ろに下がると俺の血が付いたナイフを舌で舐める。
「……俺の攻撃を受けに来るとは、なかなか面白い奴だなぁ? お前ぇ」
「誰ですか? 貴方は」
「お前、この学校の生徒にしては冷静すぎないかぁ? つまり、知覚者か?」
真ん中分けのセミロングな暗い茶髪から覗く、金色の瞳とギザ歯が獰猛な肉食獣のように鋭い。
ハの字になった眉毛とかはまだしも、顔の横から二本の線が入った刺青は囚人のそれっぽい。
――――おそらくだけど、この人も破戒の囚人院の囚人か?
「……貴方に教える気はないです」
「キヒヒ、血が出てんのに案外余裕そうだな?」
女性にじりじりと距離を取りながら、彼女をじっと見る。
上着は袖なしで、白い上着の首元がダボッとして裏地のイエローが見えている。しかも、その服の胸元は真ん中で裂けていて下乳のラインが少し見えていた。黄色い七分丈のパンツが、下着をより意識させるような左右に二つずつ穴が開いているデザインとかも奇抜なデザインで、なんでか右腕の方に白い着物みたいな形の袖を黒いベルトで留めている。
手には、黒の指あきグローブで、靴はサンダルだ。
……要するに中々に肌を露出した格好だ。それがおそらく彼女の囚人服としての恰好なのだろう。
どう見ても、漫画にいてもおかしくない見た目ですね!! 嬉しくないです!!
女性を注視しつつも、俺は彼女に
「……貴方と戦うつもりはありません!」
「キヒヒ、嫌だよ。俺の攻撃を身をもって庇うような奴、中々会えた試しねえからさぁ……大人しく、死んでくれねぇ?」
「……逃げさせてくれませんか?」
「はぁ? 逃がすわけ――――――ないだろぉが!!」
女はナイフを投げ捨てて、俺に特攻してくる。
左手の黄色のネイルがついた指先が金色の鉤爪へと変化し、俺に襲い掛かる。
俺はタイミングを見計らって、彼女の鉤爪に向かって蹴り上げた。
「体やわらけぇのなぁ!!」
「自慢なので!!」
続けて鉤爪で襲ってくる攻撃を俺は足技でタイミングを見計らって蹴り上げていく。
女性は、キヒヒ、と楽しそうに奇妙な笑いを零す。
「いいぜぇお前!! 名前名乗れ!!」
「名前を名乗っていない人に名乗る理由あります!?」
「キヒ、まあそれもそうだなぁ……いいぜ、特別に名乗ってやるよ」
女性は攻撃をやめ、俺と距離を取る。
「俺はアストリア・アルブレイド……破戒の囚人院の囚人だ!!」




