安謝武館
夕暮れ時の街中、
李英風は道場を探して歩いていた。
「この辺りに道場は無いですか」
通行人に聞くと「周先生の道場なら、そこのカドを曲がれば見えますよ」と言われた。
行ってみると安謝武館の看板が見えた。
「ここか」李は看板を見上げると中に入って行く。
中庭で1人の男が拳法の練習をしていた。
李を見るなり「何のご用ですか?」と男が尋ねて来た。
「これを預かって来ました」と李は言い男に手紙を渡した。
手紙を見た男は血相を変え「お待ち下さい」と言い、部屋の奥に消えた。
まもなく、老人が出て来た。
「どうぞ、中にお入り下さい」老人は李に言った。
部屋の中。
「あなたに手紙を渡したのは私の孫弟子です」
老人は言った。
「息子が隣街で道場をやってますが、潰しに来た連中がいるようです」
「連中は、ここにも、多分来るだろうと。そういった内容の手紙でした」老人は続けて言った。
「息子の道場の様子を見に行きたいが最近、病に伏せってまして立つのも不自由な状態で」
「先生。私が行って参ります」李と話しを聞いていた男が言った。
「羅。お前の腕では危険だ」
「宜しければ私も行きましょう」李が言う。
「ウム。私が見たところ、あなたは間違いなく武術の高手だ。お願いできますか」李は頷いた。