第10話「蒸発」
氷を操る能力を持つ異星人との交戦中、突如レイ・ソードレスが帰還した。
「無事だったのね!」
「詳しい話は後だ。アイツ……強いぞ!」
再び大量の氷片が鈴谷榛名達を目掛けて飛んできた。
鈴谷榛名は再び擬似太陽を真正面に放った。
しかし氷片は擬似太陽を避けるように左右に散らばり左右から飛んできた。
瞬時にレイ・ソードレスが高速移動能力を使って全ての氷片を叩き斬ろうとするが全ては防ぎきれなかった。
「痛っ…」
氷片の一つが鈴谷榛名の頬を掠った。
「鈴谷の娘!火傷しない程度に擬似太陽を撃ち続けろ!」
「分かったわ!」
レイ・ソードレスは閃光のように再び氷の塔目掛けて高速移動した。
「雷装全開!」
レイ・ソードレスがそう叫ぶと纏っていた雷が更に広範囲に広がった。
氷の塔で金属音が響き渡った。
「ほう…人間如きがやるじゃないか…」
白髪で赤い目の異星人はそう言うとニタっと笑った。
「人間をナメるな!」
レイ・ソードレスは続けて剣撃を加えた。
異星人はその剣撃で弾き飛ばされた。
レイ・ソードレスはとどめの一撃を加えようとした。
「人間如きが…」
異星人はそう言って立ち上がった。
その刹那、海面から巨大な氷がレイ・ソードレス目掛けて飛んできた。
レイ・ソードレスは瞬時に高速移動能力でそれを避けたものの、能力の連続使用の反動により雷装が切れ、海の中へと落下してしまった。
それを見て異星人は微笑を浮かべた。
しかし鈴谷榛名はその一瞬の隙を見逃さなかった。
「喰らえっ!異星人!」
豪速球のように放たれた擬似太陽が異星人の腹部に直撃した。
同時に眩い光と全てを焼き尽くす業火に変わった。
「ギャァァァァァァァァァァァァァ熱いィィィィィィィィ」
氷の塔の蒸発の中、異星人の叫びが聞こえた。
「お嬢様、奴はまだ生体反応があります。恐らく氷を纏って火傷を最小限にとどめているのかと…」
「なら次の一撃でトドメを刺すわ。」
鈴谷榛名は再び擬似太陽を生み出した。
「溶けてしまいなさい。」
その一言と同時に擬似太陽は放たれた。
湯気を上げる氷の塔に吸い込まれるように擬似太陽は飛んで行った。
そして大きな光と炎に変わった。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ…ァァァァ…ァァァァ…ぁぁ…ぁぁ」
すぐにに叫び声は聞こえなくなった。
「敵の生体反応…消滅しました。」
「レイ・ソードレスは?」
「海面に僅かな生体反応があります。恐らくレイ・ソードレスかと…」
「すぐに助けの船を!」
「かしこまりました!」
氷の塔は中腹部分まで蒸発し、見るも無残な姿となっていた。